IF Another despair side:Syugeibu

あってはならない未来。 けれど、ありえなくはない未来。

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Le.9

【IF Another despair】噂の真相



【20XX年 封鎖特区 横浜】

昔、銀誓館学園と呼ばれる学園があった。
表向きは普通の学園だ。だが、その実態は異世界からの侵略者やこの世に漂うゴースト達を討伐するための戦士を集め、育てる為の組織だったのだ。

しかし、世界を覆っていた結界は役目を果たさなくなり、来訪者や溢れ出すゴースト達に学園の能力者は敗北した。

これはその後の物語。
有ってはならない、けれども有り得る物語。










他の封鎖とっくに比べると封鎖特区横浜はそこまで治安が悪い地区はない。
それはこの特区の中で、一番巨大な勢力『ガーデン』が一般市民の保護をしており、その保護された市民達がその勢力内でコミュニティーを作っているからだ。
そして、本来一般人を保護すべき政府の部隊は最初から保護する気は無い様で特区内の人間は拘束、もしくは殺害が決まっているとも世間では囁かれている。
実際そうではなくとも政府がゴースト討伐以外の一般人を保護したと言う情報は流れない。
そういう政府の態度もガーデンへの支持が高まる理由の一つである。
政府は特区内の情報は規制、もしくは操作した情報を流しているが、今の時代パソコンというものがある。
インターネットを通じてどこから入手したのかは不明の特区内の映像や、組織図などが出回っており、実際情報は筒抜けと言っても過言ではない。



賑わう市場の露店に男女……いや、男同士のカップルがいた。
カップルというより親子のような年齢差が見て取れるが、太った中年男は若い中性的な顔つきの青年の肩を抱いている。
「この指輪、似合わないかしら?」
「風我にとても似合っているぞ。買ってやろうか?」
男の言葉に少し考え込む風我。
「えー、でも……。」
風我の言葉に男は遠慮していると思ったのか指輪を店員に渡した。
「あっ――」
「迷っているならかった方が良いぞ。第一、あの指輪は高くない。迷う事も無いだろう?」
男の言葉に
「それもそうね。 ありがとう。」
と感謝の言葉を述べると抱きついた。
この指輪を買った男は本来特区には閉じ込められていない。
金で政府の幕僚の何人かとも繋がっている富裕層の一人だ。
能力者の武器製作の資金援助はこの男も参加している。
表向きは政府が予算を出している事になっているが、実際は政府の予算からでは算出しきれていない。
だが、外国も世界結界の崩壊と共にゴーストが溢れるようになった今、そのような莫大な支援をしてもらうことは出来ない。
たとえ出来たとしても、頭の固く、プライドの高い政府が頭を下げるわけもないのだ。
とにかく、その穴を埋めるのはこの男を含めた政界と深い繋がりのある人々である。
その為、特区に入る事は難しくない。
そんな男が此処に来たのは、彼の特殊な性癖を満たす為だ。
閉鎖された特区内ならば『視察』という言葉ですんなり入れる。
しかも余計なマスコミなどは入れない為、気兼ねなく過ごせるのだ。
その男の目論見はある意味大成功だったと言えよう。
男の隣に居る端整な顔の青年。
彼の名は風我。
インターネットに存在するパスワード制の裏サイトに、彼の噂がある。
彼は特区内に居るらしく、『そういう性癖』の男を満たしてくれるという。
一度出会い情事を行うと、病み付きになるという……そういう噂だ。
興味半分で見た男は、今横に居る風我の顔を改めて見ると噂は本当だったと確信した。




+ + + + + +




今、男と風我がいるこのコミュニティーはガーデンのコミュニティーの一つだ。
だが、此処は『壁』にも近い上、それほど重要人物は訪れないため政府に黙認されている。
政府の兵士達も密かに此処を利用しているらしく、指揮低下を避けるためにもみて見ぬ不利をしているのだ。

このコミュニティーの内部は西エリアが簡易居住地になっており東エリアが市場や店の集まりになっている。
昼間は市場で賑わう東エリアは夜には寂しさを紛わしたい人達が集まる夜の店が開く。
その店達の中でも一際大きいその建物はこの町で一番大きな酒場であり、中からは兵士達の大笑いや独り者の男同士の愚痴、家族との思い出を眼を潤ませながら語っている女達など様々な声が聞こえる。
そんな一階の喧騒とは違い、二階は耳が痛くなるような静けさが辺りを闇と共に包んでいた。






二階のバルコニーからでっぷりとした体格の男がワインを片手に月を見ている。

「ん……あら、お目覚めだったの?」
気だるげな声に男はベッドを見た。
白いシーツを右手に握り締め男を眠そうな瞳で見つめてくる。
「すまないな、風我。 起こしてしまったかい?」
「いいえ、大丈夫よ。それより、特区の月はどう?外と何か違うかしら?」
風我はサイドテーブルのワインボトルからコップに少し注ぎ、ゆっくりと口に傾けた。
「いや、変わらんな。 こちらもなかなか良い場所だ。 美しいお前も居るしな。」
男はバルコニーからベッドに戻ってくると風我の髪をフニャフニャの指で撫でた。
撫でられた感触に目を細めると艶やかに笑い、男の頭を抱きしめる。
男は風我を抱き返しベッドに押し倒した。
「おまえは本当に最高だよ。何度でも会いたい。」
男の言葉に風がは少し眼を見開くと更に嬉しそうに微笑む。
男はそんな風我の様子に欲情したのか首を舌で舐め上げ、そのまま情事に移ろうとする。

「待って。」

風我の言葉に男は眉を顰める。
せっかく気持ちが高ぶってきたのを止められたのだから当然といえば当然か。
そんな男の耳元に唇を押し当てると小さな声で何かを告げる。

「……その代わり、後でアドレスを上げるわ。貴方ならこの意味、わかるでしょう?」
風我の言葉に男は弛みきった頬を更にだらしなく緩ませて笑う。

「おぉおぉ、お前が望むなら何でも叶えてやるからなぁ。 私に任せなさい。」
その言葉を聞いた風我は男に深く口付け、男に身を任せると
「ありがとう。 アタシとの約束、忘れちゃダメよ?」
と囁いた。




+ + + + + +




部屋の中では男がいびきを掻きながら眠っている。
風我はそんな男に見向きもせず、可愛らしくデコレーションしてある携帯を片手に誰かと通話していた。

「もしもーし? こっちは新しい資金源ゲットよー。
やっぱり政府とのつながりがある人間が結構居るみたい。
何だかんだ言って政府って突付けば埃がいっぱい出るものね。
特に今お相手した人もいっぱい埃が出そうな人だったわ。
政府とも結構深い繋がりがあるみたいだもの。
まぁ、じゃないと特区に何事もなく来れるわけ無いわよね。」

携帯の向こうで誰かが何かを話している。
その声はギリギリ風我が聞こえるくらいの声だ。
風我はおちゃらけた様子で語尾にハートマークをつけそうな風に話す。

「それにあの人、結構お馬鹿みたい。アタシの言葉に簡単に乗っちゃうんだもの。
でも、そのおかげで武器の研究資金は苦労しなさそうよ。
大丈夫、大丈夫。 人員の手引きの方も順調よ。
えぇ、そっちも不定期でこっちに送ってるもの。
世の中、結構スキモノって世の中多いみたいだし。
今の時代はインターネットとお金と美貌で結構何でも出来ちゃうのよねー。
うん、うん、わかったわ。じゃあ切るわね。バイバーイ。」

軽い電子音と共に携帯を折り畳むと月を見上げる。
月は風我を嘲笑うかのように見下ろしていた。
そんな月に思わず舌打ちをしそうになる風我。

(舌打ちなんてアタシらくしないわね)

月を見ているといつも昔の思い出が蘇ってくる。
お正月やクリスマス等のイベントの時の大騒ぎ。
朝寝坊しそうな寮生(自分も良く起こしてもらった)を起こしに来る優しい微笑の『カノジョ』
自分の兄弟達も本家ではけして見せなかった優しい表情が今でも瞼の裏に焼きついている。
そして、その思い出と共にいつもと同じように思ってしまうのだ。

もし、あの時自分達が負けなければ。
もし、あの時世界結界が壊れなければ。
もし、あの時寮に帰っていたら。
もし……もし……もし……

想像してみてもどうしようもない、過ぎ去ってしまった事。
だが、それでも思ってしまう。
あの時ああしていれば、こうしていればと言う『IF』の話。
そこまで考えて手に持ったワインを一気に飲み干す。
考えてもどうしようもない。
思ってもどうにもならない。
想像しても無駄な理想の世界を頭から流しだそうとするかのように。



すると、ベッドの方でモゾモゾと音がした。
どうやら男が起きたようだ。
こんな時に起きてくるなんてなんて運の無い……いや、これは逆に良いタイミングなのかもしれない。
風我はあの男でも気を紛らわせる事くらいは出来るだろうと思いベランダから室内へと移動する。

「あの人にはもうちょっと良い夢を見てもらおうかしら。」

ポツリと呟くと手に持っていたワイングラスをそっとテーブルに置く。






夜はまだまだ長そうだ。
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  1. 2007/09/09(日) 23:45:05|
  2. 番外編
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