IF Another despair side:Syugeibu

あってはならない未来。 けれど、ありえなくはない未来。

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Le.11

【Sirver Rain IF Another despair side:syugeibu】~黄昏の傭兵部隊~


世界結界が消えても人の世は消えない。
否、コレが世界の本来在るべき姿である、と唱える者も居た。
かつて約70億人を誇った人類も今ではその何分の一も居ないと言われるほど衰退した。
この煉獄(ゲヘナ)と化した世界で人にもたらされるのは、果たして……




封鎖特区・横浜 トツカ・エリア

封鎖特区内には、様々な勢力の様々な拠点がある。
その中の一つに、政府の部隊や傭兵部隊からは「乞食の拠点」と蔑称されている拠点がある。
それは何もその部隊が乞食なのではなく、その拠点に訪れるものたちが乞食なのだ。
そして、乞食達に食料を振舞う部隊には「偽善部隊」というありがたくないあだ名がつけられていた。
その部隊こそが傭兵部隊【黄昏】であり、その行動は彼らの親組織ACの意向であった。

「若旦那、何時までもこんなんで良いんで?」

トツカエリア周辺に住む住居不定無職の放浪者たちを眺めていた傭兵部隊【黄昏】第一機動小隊の隊長である今年で三十の大代を迎えた藤原元(フジワラ・ゲン)は少々呆れの混じった口調で若旦那こと夏優に問いかける。
「まぁまぁ、ぼやかないでくれよ、ゲンさん。
 これも重要な任務なんだからさ」
そう、重要な任務である。
部隊の任務では独自にランク付けがされており、達成難易度または戦略的重要度によって最低難易度のFをはじめとしSランクまで存在する。
今回の任務は難易度自体は低い物の、戦略的重要性からBとされているのだ。
もっとも、何故このような任務がランクB指定されているかをゲンは聞かされていない。
「それよりも、部下の様子と物資の放出具合、後は現地住民たちの様子は?」
夏優の問いかけにゲンは仕方無しに応える。
「部下の様子は…まぁ、悪くありません。現地住民に煽てられて悪い気はしてないようですぜ。
 物資の放出具合は現時点で予定の7割を放出、現地住民は喜び勇んで物資を得てますぜ」
ゲンの報告にフンフンと頷く夏優。
「あぁ、そうだ…現地雇用の方は?」
「そっちは3割ぐらいってトコですぜ」
ゲンの言葉に「そっか」と夏優は呟いてから今回の作戦についてゲンに語り始める。

現地雇用…とは言ってみればACの求人だ。
現在、世界各国でゴーストに襲われるような状況であるから、どうしても純粋な作業者の手や農家が絶対的に不足しているのだ。

そして、ACはソコに目をつけた。

例え、金があっても物資や食料が無ければそれらは意味が無いのだ。
特に、日本という国にはそれが顕著に現れる。
元々近年は食料の半数以上を輸入に頼っていた国である。
それがゴーストによる被害で食糧の輸入が激減し、国内の生産も減り始めているのだ。
そして、同じ事が様々な資源にも言えるのだ。
戦闘要員の確保と食料・資源の確保。
どちらも必要であるが、後者が無ければ前者は成り立たないのである。
そして、その為の人員確保のためにこう言うのはナンだが餌付けしているのだ、と。

「そして、今回の作戦はソレだけじゃない。
 今回の件は特区内に存在する敵対組織に対する牽制と弱体化の狙いもある」

特区内では基本的に食料を始めとする物資の調達が困難である。
彼らが物資を得るためには、政府の部隊や傭兵部隊の食料や資材を奪うか、媚び諂って恵んで貰うしか選択肢が無いのである。
実際、政府の部隊や傭兵部隊に体を売って物資を得る…というのはよくある話だ。
中には資産家や政治屋がこの特区内で特殊な性癖を満たしているという情報も数多い。
その手の話は既にAC本社でも掴んでおり、また状況証拠(音声・映像・画像)も夏優を始めとする適正のある能力者や潜入行為に長けた兵によって完全に捕らえてある。
最早、煮るなり焼くなり好きにできる状況なのだ。
だが、そうしないのには理由がある。
物事にはタイミングというものがある。
もし、仮に資産家たちを潰し始めれば、次は我が身と思い始めて手を引き始めるだろう。
そうなると、特区内は今よりも物資が枯渇し、略奪行為が多くなってしまうことは目に見えている。

だから、まだ早いのだ。

そこまでゲンに語るとゲンは少々難しい顔をしていた。
「若旦那…アタシにゃなんだか、気が滅入る話です」
ゲンは嘗て極道者と呼ばれる人種であったが、その中でも最も珍しい『仁義』や『任侠』を重んじるタイプの人間であった。
その彼には平気な顔をして偽善を振舞う行為は余り良いとは言えない物として印象づいた。
「そう言うなってゲンさん。
 敵を作らずに敵を減らしていくにはこういった工作も必要なんだよ。
 下手に人類同士で数減らしあってちゃ、世界も人類も滅亡しちまうんだからよ」
世界や人類の滅亡…この御時世ではそれは別に可笑しい話ではないだろう。
人類の規格外と言える神がかった力を持つ能力者が居るという信憑性のある噂。
何時襲撃してくるか不明な来訪者達。
神出鬼没なゴースト達。
そして、ACも含む人類組織同士の大規模な抗争。
これらは今、非常に絶妙なバランスで世界を形作っている。
そう、突いてしまえば崩れてしまいそうな、積み木の塔のようなものだ。
だから、計略は静かに…しかし確実に遂行する必要があるのだ。

「その為に、今日は会長も視察と演説にきてるしな」
「そうですか、会長が…ん? か、会長がですか!?」
ACの会長、海部野冬美と言えば、かなりの有名人である。
今や日本でも有数の企業体となったACの若き会長にしてCEO(最高経営責任者)。
その噂は多岐に渡り、端的な例を挙げれば慈愛と聡明さに満ちた女神の如き美貌を持つ女性、はたまた悪魔と契約を交わした冷酷にして狡猾、醜悪な魔女の様な女性である、と。
そして、マスコミに狙われるのは勿論、財政界の一部や敵対組織にその身を狙われているのだ。
「い、良いんですか若旦那…会長の護衛に回らなくても?」
「だいじょーぶ大丈夫。 会長は俺と同じく『銀誓館学園の卒業者』だぜ?
 実力は折り紙つきだよ」
「し、しかし…」
ゲンは更に言い募ろうとして口を噤む。
夏優が実力を認めるということは、認めた分だけの実力が確かにある…という事だからだ。
その事は他でもない、ゲン自身が良く理解している。
自らが若旦那と呼ぶ男は、少なくとも他人を評価する時に私情を混ぜるという事はしない。
だが、万が一…という事は想定する必要があるのだ。
「じゃあ、そんなに気になるならちょいと様子を見に行こうか。
 今の時間は予定じゃ演説が終わるあたりだ」


夏優達が拠点の広場に向かおうとするその時。
時を同じくしてとある武装集団が拠点より少し離れた場所で話し合っていた。
「……小隊長、やはり彼奴等は政府の息が掛かった部隊の模様です。
 彼奴等は食料や物資を敢えて供給することで、民意を得て自陣の勢力に組み込むつもりのようです。
 そしてこれは我ら『ガーデン』及び特区内に存在する組織の弱体化を狙っている模様です」
若き青年の報告を聞き、小隊長と呼ばれた女が憤りを押し殺した様子で呟く。
「我らを畜生の様に餌で釣って飼い殺そうというのか?
 舐められた物だ」
分隊長はどこか狂的な笑みを浮かべたまま宣言した。

「これより我らは敵性部隊に対し攻撃を仕掛ける!
 見敵必殺!目に映る敵は全て排除せよ!
 奴等から施しを受けた民は見せしめだ、殺せ!
 我等『ガーデン』を、そして『教主』様を欠片とて裏切る物は赦す訳にはいかん!」

小隊長の宣言に、『ガーデン』、そして絶対的上位者である『教主』の意向が本当に反映されているかは不明だ。
だが、特区に置いて『裏切りには死を』というのは半ば常識である。
それだけ、『裏切り』『利敵行為』には敏感なのだ。

「「「「「うぉおおおおお!!!」」」」」


傭兵部隊【黄昏】の拠点の応接室にて紅茶を飲んでゆっくりしていた夏優と冬美。
そして冬美に対し若干の緊張をしているゲンが居た。
「そろそろ…かな?」
「そうですわね、そろそろ…でしょうか」
二人の呟きに、何がでしょうか?とゲンが尋ねた。
「あぁ、そろそろ気の短い敵が居れば向かってくる時期かな、と」
「えぇ、宣戦布告はさせて貰いましたからね」
冬美の演説、それは自分達は特区内に暮らす者たちを援助する。
望むのならば、我々の企業の一員として特区の外に連れて行こう。
我々は今、貴方達の手を必要としている、どうか我らに手を貸して欲しい。
かなり短く要約すると、そんな感じの演説をしたのだ。
「そして、この宣言は組織に所属する者もしない者もとにかく人手を引き抜いていく…という事です。
 組織は人が居なければ成り立ちません。
 詰まり…人が居なくなっては困る、と焦った組織からどんどんこの拠点目指して襲撃に来ることでしょう」
「んで、俺たちは篭城も使いつつ敵を撃破すればいい訳だ」
そう言ってから夏優は隊の配給装備である無線通信用のインカムのスイッチを入れて管制室に指示を出す。
「あ、上原? 警戒態勢を発令、多分そろそろ焦った敵がノコノコやってくる。
 ちょっとでも何かあったら直ぐに臨戦及び迎撃態勢を許可。
 特区住人は安全な場所に避難させるか、希望者から直ぐに特区外への搬送をしちゃってくれ。
 陸路は襲撃の恐れがあるから輸送ヘリの使用許可を出す。
 ただし、出来るだけ静かにな?
 んじゃ、後の細かい部分はソッチに任せる」
そういって夏優は適当に指示を出すと立ち上がる。
「兄さん、判っているでしょうが…」
「あぁ、人的損耗0かつ、敵性部隊は可能な限り捕縛…だろ?」
夏優の言葉に冬美は我が意を得たり、と頷く。
「んじゃ、行こうか二人とも」
「えぇ」
「わかりやした!」

夏優と冬美、ゲンが管制室に辿り着くとどうやら既に敵を発見したようであった。
「天野隊長、藤原隊長。
 敵と思われる分隊規模、班規模の武装集団を2部隊監視カメラが確認。
 映像とマップをこちらのモニタに映します」
隊員がそう報告すると同時にモニタに地図と敵の武装集団予想進路、
そして、監視カメラが得た敵の様子が映る。
「ふぅん、この二つの分隊規模の武装集団…
 衣装は少しバラけてるけど、どうやら所属組織は同じみたいだな」
「その様ですわね、彼らの衣装のドコかしらに必ず同じエンブレムが施してありますし」
夏優はフム、と頷いてから現在この拠点に留まっている部隊を思い出す。
(俺の混成小隊と藤原機動小隊が今この拠点に居るか。
 佐伯特殊小隊は今は哨戒任務についているんだったな…)
次に部隊の配置を思案する。
先ず、モニタに映る地図を見る。
(敵は分隊規模が正面に来ている。が、コレは陽動だな。
 本命は逆を突くように来ている班規模の敵だ。
 敵はまさか監視カメラで既に発見されているとは思っていないようだな)
事実、敵集団は監視カメラに気付いていなかった…否、想定してすら居ない。
しかし、それも仕方ないだろう。
監視カメラは巧妙にカモフラージュされて、潜入に長けた兵士ですら見つけるのは難しい上に、ここは封鎖特区内だ。
そもそも、傭兵達の拠点如きに監視カメラを設置するという思考事態が無いだろう。

「んじゃ、配置なんだが先ず藤原隊が正面の陽動の対処に当たってくれ。
 俺の部隊は拠点の裏を中心に半数を伏兵として配置、残り半数は拠点内にて潜入してきた敵を撃破。
 後、拠点の砲台にはトリモチ弾を装填。
 んで、今回は皆生け捕りにしてやれ、ただし、抵抗激しい場合は殺傷を許可。
 細かい作戦は特になし、ただし報告と連携は密に行うように、以上」
それだけの指示で隊員たちは動き出した。
「…なんというか、かなり大雑把な指示ですわね」
その言葉を聞いていた隊員は大きく頷いた。
「俺の頭で即座に対処できる指示なんてこんなモンだよ。
 個人的には、いい加減副官…軍師が欲しい、マジで」

かくして、戦闘は始まった。
拠点に備え付きのスピーカーからガーデンの兵士達に警告が飛ぶ。
『接近中の武装集団に告ぐ!
 援助物資を求めるのであれば武装を解除せよ!
 従わぬ場合は敵対的勢力と見做し、当方は発砲を辞さない!』
しかし、ガーデンの兵士達はその警告を無視して歩みを進める。
そして、藤原隊とガーデン部隊の相対距離は既に40mを切っていた。
「頃合だな…」
その様子を真正面から見ていた藤原はそう呟くと、インカム越しに指示を出す。

「正面、敵部隊に向け一斉砲撃を開始せよ!」
『『了解っ! トリモチ弾一斉発射!!』』
その返事と共に、拠点の砲台からトリモチ弾が一斉に放たれる!
トリモチ弾はある程度まで砲弾として進むと途中で中身のトリモチがぶわぁっと広がり、ガーデンの兵士に襲い掛かる!
それらは不幸にも防御を行おうとした、少数のガーデン能力者を中心に被弾してしまう。
通常の攻撃であれば、耐えられないことは無い、そう思っていたのだ。
「な、なんだこれは!?」
能力者の力を持ってしても身動きが取れないモチの様な謎の粘性物質に、ガーデンの兵士は慌ててもがくが、もがけばもがく程防具の隙間にトリモチが入り込んで行き、身動きが取れなくなっていく。
「気をつけろ!あいつら俺たちを生け捕りにする心算だ!!」
誰かが言い放つその言葉に、トリモチに捕まったガーデン能力者は青褪める。
政府に生け捕りにされたものは、例外なく人体実験に曝される。
そういう、噂が特区内では広がっている。
最も、これはタダの噂ではなく、事実である。
俄かに必死になり始めるガーデン兵士。
何故なら、傭兵部隊は基本的にこの様な装備を使わず、機銃や刀剣などの普通の兵器を使うはずなのだ。
そして、何よりも傭兵部隊は非能力者部隊であることが多く、能力者を含むガーデンの部隊ならば早々負ける事が無い、という自負があった。
「藤原機動小隊、突撃じゃぁッ! 野郎ども、続けいっ!」
ゲンが動揺した敵に小隊を率いて突撃命令を出す。
「「「「「応!」」」」」
ゲンを中心に3人1組の機動班が突撃をかける!
「応戦しろ! 敵が来るぞ!」
誰かの言葉にガーデン兵士達は一斉に反応し、手持ちの武器を構え、或いは射撃を始める。
「各班、散開せぃ!」
ゲンは詠唱ガトリングガンの射撃攻撃を機動装甲服の盾で防御しながら、跳んだ。
それは非能力者では、否、能力者でもソコまでは無理であろう大跳躍。
そして、上空でガーデン兵士に狙いを定め、腕を突き出す。
「おぉぉおおお!!!」
叫びと共に急降下しつつ、突き出した腕からアンカーを放つ。
「ぐぉ!?」
それに反応し切れなかった非能力者兵士はアンカーの一撃を受け、そして。
「怯えろ、すくめぃ!! 力を発揮できないまま沈むが良い!」
ゲンは相手に突き刺さったアンカーから高圧電流を放つ。

ゲンが攻勢に出ている一方で梃子摺る者も居た。
「ぐぁっ!?くそ、早い!?」
態勢を立て直したガーデン能力者が高速移動をしつつ、一部の戦力を押さえ込んでいたのだ。
「貴様らとは違うんだよ、貴様らとは!」
見るものが見れば判るだろう、かの能力者が『インフィニティ・エア』と呼ばれる能力を使い、高速で移動を行っていることが。
「トドメだ、吹き飛べやぁっ!」
能力者は最後の一撃、と言わんばかりに高速で接近し、バットを振るった。
が、その選択は間違いであった。
機動装甲服を纏った兵士の腕がガキィ!と盾でそのバットを防ぎ、受け流した。
「う、うぉあぁぁ?!」
受け流されたせいで態勢を崩した能力者はそのままの勢いでモロに周囲に存在した壁や役目を果たさなくなった電柱に激突し、自爆する形で重傷を負って行った。
「え、えぇっと…ラッキー?」
隊員は自爆した能力者を素早く捕縛し、一時後退をした。



一方、拠点の裏で待ち構えていた夏優たちはガーデン小隊長の部隊と相対していた。
既に大勢を決したのか、正面の戦闘の音は小さくなってゆく。
「どうやら、向こうは片付いたみたいだぜ?
 ウチの拠点からは悲鳴も聞こえないし、アンタのトコの負けだな」
「くっ!」
小隊長は苦々しい顔をし、周囲をざっと探る。
周囲には目の前の男の用意していた部隊が自分達を包囲している。
見た所、SF小説等で出てくる様なパワードスーツを着込んだ部隊と詠唱兵器を構える能力者の混成部隊。
こちらは武装こそしているものの装備面では明らかに劣っている。
非能力者兵士の武器が彼らの防具に有効であるとは思えない、そう思わせるほどにだ。
コチラの隊員数は自分を含め5人、敵の数は優に自分達の4倍か伏兵がまだ居るのならばそれ以上。
明らかに劣勢だ。
勝てっこない。
「どうすんだ?まだやるのか?
 ハッキリ言って無駄だぞ?」
明らかに舐めきった─しかし、道理である男の言葉に小隊長は一矢報いらんと自慢の愛剣を男に向け宣言する。
「貴様に一騎打ちを申し込む!」
小隊長から見て、男からは脅威を感じない…。
もし挑発に乗るのならば勝ち目があると踏んだ。
なにせ、自分は中級のゴーストでさえ屠れる腕がある。
ただの能力者後時に負ける筋合いは無いのだ。
「はぁ? ……まぁ、いいか。
 俺を倒せたらお前達を見逃してやってもいいぜ?」
そう言って男は懐から一枚のカードを取り出す。
「え?」
小隊長は思わず疑問符を浮かべた。
戦場に立っているのにも拘らず、戦闘用意すら取っていなかった?
それはとてつもない屈辱であった。
自分は取るに足らない雑魚である、といわれているのと同じだ。

「イグニッション!」

だが、その屈辱は男が機動した瞬間に消えた。

足が震える、闘志が消える。
男は使い古されたコートを纏い長剣を片手にタダ佇んでいるだけ。
だというのに、目の前の男に関わるな、と本能が訴える。
小隊長は漸く悟った。
この目の前の男に自分では勝てない、と。
明らかに実力が違う、そう感じさせるほどの何かを感じ取った。

この男とまともに戦えるとすれば、ガーデンでは守護部隊の隊長ぐらいであろうと。

「さて、弱いもの苛めになるが始めようか」

そこからは正に弱い者苛めであった。
あからさまに手加減していると思われる攻撃を小隊長は必死になって剣で防ぐ。
「ほらほら、次は右、その次は足だぞ?」
まるで、訓練を受けさせられているんじゃないかと小隊長は錯覚する。
そして、男が距離をとる。
「苛めてばかりも部下の手前カッコがつかないな。
 今度はソッチから攻めて良いぜ、反撃はしないからドンドンこいよ」
ふざけている。
そう、ふざけすぎている。
「ならば受けるが良い!我が最大の一撃を!!」
小隊長は剣に闇を纏わせ、男に突っ込み──逆袈裟に剣を己に残された最後のプライドと共に全力で振るった。

が、その一撃を男は剣で払って流しきった。
そして体勢を崩しきった所で喉元に男の長剣が突きつけられた。

「話にならない、お前…もしかして精々中型のゴースト倒せたぐらいで良い気になってたんじゃないか?」
小隊長の動きが、心が固まる。
「ビンゴ、か」
「「しょ、小隊長!!」」
ガーデンの兵士達は溜まらず声を掛ける。
夏優は思わず溜息をついた。
まさか、この程度の相手に挑まれるとは思っても居なかったのだ。
「…ぶ、部下の命だけは見逃してくれ。
 私はどうなっても構わない」
小隊長は搾り出すようにそれだけ言う。
それは事実上の降伏宣言だ。
「あぁ?
 あぁ、なるほど…あんた殺される、とか人体実験に掛けられるって思ってるクチか?
 ウチの企業じゃ人体実験とかそーいうのはやってねぇんでな。
 ご期待には添えられんな。
 後、エロゲ的な女性を陵辱するってのはウチの会長の意向でできないんだ、二重に残念だったな」
後者は寧ろ夏優の方が残念そうだった、と言うのは言わぬが華だろう。

こうして、戦闘は傭兵部隊【黄昏】にとって有利のまま終了した。
この後、ガーデンの兵士達はACの本拠、伊勢原まで搬送され、特区外にて監視付で暮らすこととなった。
なお、ACは彼らからガーデンに関する情報をある程度まで引き出すことに成功したが、『教主』という人物の詳細を得ることは出来なかった。
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  1. 2007/09/15(土) 23:00:40|
  2. 番外編
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