IF Another despair side:Syugeibu

あってはならない未来。 けれど、ありえなくはない未来。

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No.5

【IF Another despair side:syugeibu】新たな扉



【20XX年 封鎖特区 横浜】

 始まりにして終わりの地、鎌倉。
 世界結界はもはや意味をなさず、
 敵性来訪者の来襲、そしてシルバーレインによるゴーストの発生により荒廃した地。
 そのすぐ隣に存在する特区。
 終末のお隣さん、とも揶揄されるもう一つの封鎖特区。
【封鎖特区・横浜】
 この物語は、世界の終りの一歩手前で紡がれる。










それを見たのは偶然だ。
ただ、たまたま相手が居らず暇な日だったので、少し運動しようかと思っただけだった。
風我の戦い方は実戦向けではない。
寝技や暗殺術は磨いているが、実戦ではせいぜい平均能力者だろう。
だからこそ、こういうゴーストが少数発生した場所は良い訓練場だ。
奥地に入らなければ一人の力でも訓練になる。
奥に行けば行くほど、平均の能力者一人では後退が出来ない。
それはつまり、風我にとって『死』を意味するのだ。
だから、今回も風我は手前で訓練するに留めるはずだった。



そこに彼を見つけなければ。



「ねぇ、一つ聞いて良いかしら?」
黙々とゴーストを相手に修練を行っていた“死神”に風我は意外そうな表情をしながら聞く。
紅刃が煌く
大鎌の一閃で大気が割れる。
「なんです?私の今の状況を見て、質問ができる貴方は随分頭が弱いのか、はたまた嫌味でやっているのか。私としてはそれを聞きたいですね。」
切裂ききれなかったゴーストたちが立ち上がってくるのを横目で見ながら無感情に言い放つ。
その“死神”の言葉にクスリと笑う。
「それもそうね。じゃ、もう少し待っててあげるわ。」
別に待たなくても良いですよ。そう呟いた“死神”に思わず吹き出してしまう。
その声を聞いて、“死神”は更に面倒臭そうにため息を吐き、目の前の巨大ゴーストに駆け出した。




+ + + + + +




地面に散らばる銀、銀、銀。
星屑のように輝く詠唱銀の欠片達。
それら全ては“死神”の持つ大鎌で刈り取られた魂だ。
それらは全て彼の大鎌に吸収されていく。
“死神”は近くの瓦礫の山に座り流れてくる汗を拭う。
この廃病院に存在していたゴースト達は全て彼と彼の大鎌の糧となった。
それほど疲労した様子はなく、汗を拭い終わると書類を取り出し、目を通し始める。
「お疲れ様。」
いつの間にか隣に座っていた風我に目も向けず、書類を一枚めくった。
相手にされなかった事に少しむくれた顔をすると書類をめくる腕に抱きついた。
「私はそういう趣味はありません。」
仕事の邪魔をする風我を体から剥がすと再び書類に目を通し始める。
そんな“死神”の様子にやれやれといった風にため息を吐く。
「ねぇ、さっきも言ったけど、一つ質問して良いかしら?」
「なんです?くだらない事を聞いてきたら首が飛びますよ。」
目を書類から離さずあっさりと恐ろしい事を言う。
それは怖いわねとまったく怖がらずに言いつつ、最初に言おうと思った疑問を聞いてみる。
「貴方って、あんなに必死に訓練するタイプだったかしら?」
瓦礫に肘を乗せて面白い事を見つけたように聞く。
書類を見終わりサインをする。
構わず続ける風我。
「アタシの知っている帯刀・翔護という男は生に無頓着だったわ。だから何時死んでも命乞いもせず、生きる事に面倒臭くなれば自ら命を落とす……そういう男よ。少なくとも昔の貴方はね。」
書類を仕舞い、顔を上げた。
「そうですね。昔の私ならこんなに必死に訓練しなかったでしょうね。来るものは殺す・暇つぶしに殺す・気に入らないから殺す。そういう男でした。まぁ、今でもそれは変わりませんが。」
ニヤリと哂うと、貴方も死にますかと聞いてきた。
もちろん答えはNoだ。
「私は自分の意思で死ななくなっただけですよ。もちろん、無為に死ぬ事は論外です。私の命はあの方の為だけに使うと決めたのです。あの方の為に殺し、あの方に命じられた事を忠実にこなし、あの方の横浜制圧を見届ける。特区横浜制圧が終われば政府の抹殺を見届ける。それが終われば次のあの方の目的を見届ける。……それだけです。」
優しい瞳で語る“死神”
彼の言うあの方はやはり……
「“教主”ちゃんの事ね?」
ギロリと風我を睨み付ける。
「わかった、わかった。“教主”サマね。これで良いでしょ?」
肘を突いていない手をヒラヒラと振る。
“死神”の彼女への忠誠心はあの寮に居た頃から良く知っている。
だが、今の“死神”は彼女に盲目すぎる気もしなくはない。
それは彼女だからこそ無意識になせる技なのかもしれないなと風我は思った。
ガーデンの宗徒はそういう者が多い。保護された一般人からもそういう盲目的な者が段々増えてくる。
実際、彼女は何もしていない。
自分の理念「人々を苦しめる政府を滅ぼし、監視という檻に囚われ駒として使われる能力者を解き放つ。ゴーストに怯え悲しむ一般人を助け、小さな幸せを持てる優しい世界を作る。」その為に共に歩みませんかと聞いているだけだ。
彼女の理念に賛成する者は多い。
風我も政府に日常まで監視されるのはごめんだと思っている。
その上集めた情報によると、裏では能力者を使った怪しい人体実験が行われているらしい。
馬鹿げていると言われそうだが、情報源が情報源なだけにありえないとは言えない。
その危険を考えると政府に居るよりガーデンにいた方が良いだろう。
(正直言ってアタシも政府、嫌いだしね)
「なるほどね。それで影でこっそり修練かー。なかなか可愛い所があるのね♪」
「……」
無言で睨んでくる“死神”
兵士でも凍りつくような瞳だが、風我は睨む理由を考えると笑えるようだ。一向に笑いを収めようとはしなかった。
「でも、もうそろそろ限界来てるんじゃない?」
急に笑いを静めてきっぱりと言う。
その言葉に思わず眉を顰める。
“死神”自身、限界を感じていないわけではない。
それは“喪失”との戦いで嫌というほど分かった。
守るべきあの方に逆に守られたなど、屈辱以外の何者でもない。
もちろん“喪失”の攻撃範囲、攻撃特徴、それの対処方法を掴み切れなかった自分に原因はある。
しかし、それを差し引いても彼は普通の能力者の限界という現実をまざまざと見せ付けられていた。
「やはり、何か必要ですね。限界を超える何かが……。」
“死神”の言葉を耳に入れながら、風我はこれ以上話す事はないと思った。
おそらく次会う時、彼はまた強くなっているだろう。
今の彼をBと考えるなら、次に会う時はAランクの世界に行っている。
「走り出した一途馬鹿ほど手をつけられないものはないものね。」
自分の世界に入った“死神”を背に風我は笑った。



建物を出た風我は、コミュニティーへ続く森の一本道を歩く。
ふと、なにも無い所で立ち止まる。
風が木々の葉を揺らし、辺りは不気味な静けさを保っていた。
しばらく、目を閉じてその場に立ち止まっている風我。
何も起こらない事にため息を吐き、口を開く。
「アタシ、気配を読むのって得意なのよね。そんな気配駄々漏れな隠れ方で、本当に隠れてるとか思ってたわけ?」
鋭い風我の言葉にどう見ても一般人ではない出で立ちの男達が風我を囲むように現れる。
「さしずめ、“死神”狙いの政府隠密部隊って所かしら?」
風我の言葉に臨戦態勢をとる男達。
そんな様子を無視し、男達をぐるりと見回る。
ざっと10~20といった所か。
能力者はなし。対能力者用武器を所持している非能力者部隊と言ったところね。
辺りに潜伏兵はなし、新兵は二人。
……いくらSランク以上の化け物じゃなくても“死神”相手に新兵入れるなんて馬鹿の極みね。
「“死神”はこの先の廃病院にいるのだな?」
隊長格風の男が一歩前に出る。
「んー? まぁ、居るといったら居るかしらね。ただ、今は彼に近づくのは止めた方が良いわよ。惨い殺され方をされたくなければね?」
これは本心。今会いに行くのは彼らにとって自殺行為だ。
考え事を無理やり中断された彼があっさり殺すわけない。
彼らの絶叫、うめき声、命乞いを聞きながら考え事を進めるだろう。
だからこそ風我は警告した。
だが、そんな風我の言葉に新兵風の男が前に出る。
自分達を侮られたと思ったのだろう。
隊長の男が制止の言葉を振り切る。
「貴様、我等が負けるとでも言うつもりか!? 下手に出れば付け上がりやがって!!」
深いため息が漏れる。
「あのねぇ。か弱いアタシにガタイの良い男が囲んでるのよ? どう見ても下手に出てないでしょうが。」
呆れたようにやれやれと首を振る。
カチンと来た新兵の男。
小銃を風我に向けた。
89式5.56ミリ小銃をベースにした能力者用特殊武器って所ね。
試作段階な上に、能力者用の仕様で普通より2倍は重くなっているらしいからアタシは使いたくないわね。動かしにくいわ。
銃を突きつけてきてもまったく動じない。
いや、表向きは怖がっている振りはしているが、心の中では冷め切った目で状況を分析している。
隊長の男はその様子にため息を吐く。
どうやら風我の怖がるフリを見て侮っているようだ。
(これだから奢りが過ぎるのよね)
「どちらにしろ、君には此処で死んでもらわなければならない。目撃者から我々の情報が漏れたら困るからな。それに、君も一般人ではないようだしな。」
その言葉と共に囲んでいた男達が構える。
「最初から準備は終わっているのに余裕で構えちゃって……知らないって怖いわね。」
風我の呟きは辺りを振るわせる銃声でかき消された。




+ + + + + +




戦いは一瞬で終わった。
銃声のオーケストラと共に風我の体が崩れる。
しかし、風我ではなく無残な風穴の開いた紙切れが地面に落ちる。
正確には風我として構成していた偽身符が壊れただけだ。
なんのことはない、普通の能力者の技だ。
予想をしていなかった隊員達は一瞬の隙を生む。

それが命取りになる事を充分に理解していたはずなのに……

風を切る音。
飛び散る赤い血。
空を舞う虚ろな瞳。
何も感じる事も無く、この世を去った。



風我は最初から彼らに気がついていた。
そう『最初から』だ。
廃病院がある山の道に入る前から風我は彼らの気配に気がついていた。
その為、山に入る時は偽者を入れた。
“死神”と話していた風我はダミーだったのだ。
それに気づけなかった時点で、彼等は負けていた事になる。
もっとも、“死神”に会うよりも風我に殺されていた方が幸せだっただろうが。



神之戯風我の索敵能力は異常なほど高い。
それは風我個人の戦闘能力がそこまで高くないため、特区に居る間に身に付いた自然な力だ。
おそらく、どれほど高度な気配の消し方を身につけていたとしても彼は見つけることが出来るだろう。
なぜなら、彼の索敵能力を授けたのもまた、人外の力を持った能力者だからだ。
一概に、Sランク以上の能力者といっても様々な力がある。
個人の能力の狂特化。
詠唱銀中毒末期症状。
第三者から与えられし『特例』
上げだせばキリが無いかもしれないので此処で留めておくが、共通するのは『無意識の気配消去』だ。
同ランク以上の能力者で無い限り気配を完全に読むことは不可能な気配消去。
それはけして普通の能力者は持ちえぬ力だ。
それを完璧に読みたいのならば、四六時中彼らと共に居なければならない。
風我はそれを“教主”によって授けられた。
顔を極端に視界の狭い仮面で隠し、彼女の『散歩』に付き合うのは普通についていくよりもかなり命がけだ。
置いていかれれば死ぬような戦場。
間隔が1cmしかないロープを彼女のスピードについていきながら進む。
置いていかれればどこからともなく衝撃が飛んでくるのだ。
その衝撃は、おそらくかなりの手加減をしていたのだろうが、風我にとってはそれでも何度死に掛けた事か。
(絶対三度は死んだわね)



コミュニティーの公園で蟲を回収しながらそんな事を思い出していた。
ふと、ポケットから振動を感じて携帯を取り出す。
「はいはい~?」
黙って相手の話を聞く風我。
一通り聞くと、いつものマシンガントークが飛び出した。

「ふーん? あのお爺ちゃん、亡くなったの。こっちで消す手間が省けたわね。どうせ、吸い尽くすだけ吸い尽くしていたし、良いんじゃない? あと、危なそうな何人かは切るつもりよ。吊し上げがある前に切りたいわね。向こうにはアタシの名前しか知らないから、心配は……そうね、多分“教主”サマは気にしないわね。きっと、あの人、核爆弾受けても死なないわよ。いや、冗談じゃなくて。……ん? 苗字は言ってないわよ。まぁ、普通の組織よりこっちはコストかからないけし、今集めた資金で普通の戦争は5年はできるから、長期戦も大丈夫。第一、特区の戦いはそれほど長引かないと思うし。第一、まだまだ他の資金確保があるから大丈夫よ。海外チームからの素材ゲットもバッチリだし。

……そういえば、一つ聞きたいんだけど大臣の浮気現場と、賄賂現場の写真ってどのくらい出せると思う?」



裏の暗躍は止まらない。
人に歪がある限り。

狂気は止まらない。
そこに悲しみがある限り。

世界の進行は止まらない。
この世界がある限り。
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  1. 2007/09/15(土) 23:56:40|
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