IF Another despair side:Syugeibu

あってはならない未来。 けれど、ありえなくはない未来。

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No.6

【IF Another despair side:syugeibu】J'aime mieux que la mer la terre


【20XX年 封鎖特区 横浜】

 始まりにして終わりの地、鎌倉。
 世界結界はもはや意味をなさず、
 敵性来訪者の来襲、そしてシルバーレインによるゴーストの発生により荒廃した地。
 そのすぐ隣に存在する特区。
 終末のお隣さん、とも揶揄されるもう一つの封鎖特区。
【封鎖特区・横浜】
 この物語は、世界の終りの一歩手前で紡がれる。



【カナザワ・エリア】

 ガーデン本部はとても広い。
 元は寮であったそこを拡張して、様々な施設が出来ているからだ。
 だが、寮自体は殆ど変わっていない。
 ただ、大食堂は寮生ではなく、ガーデンの兵士や本部に保護されている孤児達の食事を取る所になった。
 他の施設も同じように使う人間は変わっていった。
 元居た寮生は政府に捕まったか、逃げ出したか、別の目的に歩き出したか。
 どの目的であろうと、寮生達はこの寮に帰ってくる事はなかった。
 だが、本館の3階階段前。
 そこには昔とまったく変わっていない内装をした部屋がある。
 それが、クリス・ラズヴェルの部屋だ。

「いやいや、ちゃんと物は増えたんだよ?第一、ヒカルちゃんやお兄ちゃんの部屋とかも殆ど変わってないし……。」
「誰に言っているんだ?」

 レインの言葉に「なんでもないよ。」と苦笑いを浮かべながるクリス。
 明らかに誤魔化された事に眉を顰める。
 だが、すぐに元の無表情に戻ると、再び、外の風景に視線を戻す。
 しばらく水の流れる音と、水の中で泳ぐ泡の音が部屋に響いていた。
 クリスが眠くなったのかぼんやりし始めた頃、部屋のノックが聞こえた。

「失礼しますね。」

 聞き覚えのある声にレインは姿勢を正す。
 クリスも寝転がっていたベッドから起き上がる。
 中に入ってきたのは、二人が予想した人物だった。

「お呼びがあれば、こちらから出向きましたが。」

 レインの言葉に首を振る教主。

「構いませんよ。散歩から帰った直後に耳に入った情報でしたから。」

 教主の散歩と言う言葉に思わず微妙な顔になるレイン。
 どうやら教主はまた『散歩』に出かけていたようだ。
 この人は凄い所まで出かける事があるうえ、気がつくと居なくなってしまうから供を連れて行くことすらままならない。
 まったく……本当に手に負えない人だ。



「秘密裏に能力者実験を進めているという情報を手に入れました。」

穏やかではない単語に眉を顰める。
能力者、もしくはその素質があるかもしれない者に過剰な投薬などの実験を施す。
しかも、素質があるかもしれないだけで、大抵は一般人だ。
一般人を平然とモルモット扱いする実験者・政府。どちらも救えない愚者だ。
まるで小説の話だが、嘘ではない。
実際、教主もクリスもガーデンを作る前にそういう実験を受けていた。

「それは風我経由の話か?」

嫌悪感を隠す事も無く手を握り締めながら言うレイン。

「はい。風我さんの情報ですから間違いないでしょう。」
「ねーねー、ヒカルちゃん。その人達殺すの?」

 クリスの言葉に思案するように首を傾げる教主。

「さぁ、どうしましょうか。クリスはどうしたいですか?」
「悪い奴らならやっぱり倒さなくちゃダメなんじゃないのかな?」
「そうですね…彼らは能力者や弱い人たちを苦しめる悪い人達ですからね。」
「なら、実験場を潰しちゃおうよ。」

 ニコニコ笑って無邪気に言うクリスに、手を握る力を少し強める。
 クリスの受けていた実験の事を思い出してしまった。
 彼女が受けていたのは、かつて世界結界が壊れたその時、空から降ってきた大量の詠唱銀を採取したグループが行っていた実験だ。
 助け出した時には実験はかなり進んでいたのか、なんとか手遅れにならなかった程度だ。
 その後遺症なのかクリスは思考が単純化しており、まるで幼稚園児程度の思考回路だ。
 しかし、そのかわりと言うべきか、それもまた後遺症の産物だがクリスは戦闘中まったく迷いがない。
 ……それも、実験の結果なのだと思うとやりきれないが。

「そうですね。丁度ミドリ・エリアを制圧するつもりでしたし、クリス、レイン、捕まっている人達を助けてくれますか?」

 思考の渦に飲み込まれている間に決断したのか、教主は俺達に出撃を命じた。

「了解した。」
「早く、酷い目に遭わされている人達救おうね!」

 二人の言葉に嬉しそうに微笑む教主。

「ありがとうございます。情報によると、彼らは最終防衛地点の実験施設に居るそうです。」

 教主の言葉に首を傾げるクリス。

「どうして最後の防衛線ギリギリの所で実験してるのかな?もっと安全な場所ですれば良いのに。」

 クリスの疑問に口を開く。

「おそらく、中心で実験を行うと失敗した時に相当の痛手を負う事を考慮したのだな。最終防衛地点ならば、最悪、失敗したモルモットを放り出せば済む。」

 その様子を頭に浮かべたクリスは口をきつく結ぶ。

「うっわー、超悪い人達だね!絶対やっつけなきゃ!」

 そのまま飛び出そうとしたクリスの首根っこを掴み、その場に押し留める。
 しばらく時間が経つと落ち着いたのか、元居たベッドに戻った。

「教主。近頃、企業から送られる特殊な部隊が一般人に施しをしているって聞いたけど、そっちは良いの?対策立てなくて。」

 その部隊は最近現れたどこかの企業の特殊部隊らしい。
 部隊を指揮している隊長が良いのだろう。その部隊の総合的能力はなかなか評価に値するものだと聞いた。

「彼等は一般人に食料を提供していると聞きます。悪い事はしていないでしょう?」
「うーん。それはそうだけどさぁ。」

 納得いかないのか唸っている。
 だが、どういう風に言えば良いのか分からないようだ。

「クリス」
「うん?」

 真面目な表情にクリスも首を傾げる。

「私達は弱い人を助けるために動いています。彼等も政府に加担しているとはいえ、人々を助けています。交戦しない限りは私達も手を出すべきではありません。」

 教主の言う事はもっともだ。
 ガーデンの根本的な目的は『全ての特区に居る戦うすべを持たぬ人々を助ける事』だ。
 その信念から見ればその特殊部隊が行っている事は俺達と同じだろう。
 だが……

「もしも、僕達の行動を邪魔した場合は?」

 クリスの言葉に何も言わず微笑を浮かべる。
『邪魔をするならギリギリ死なない程度に痛い目を見てもらう。』
 ……つまりは、そういう事だ。

「ヒカルちゃん、怖いねー。」

 手を軽く叩きながら笑うクリス。
 正直言うとお前も怖い。

「殺さないのは、一般人に食料を提供してくださった御礼です。」

 御礼にしては随分な話だ。
 特に『ギリギリ死なない程度』がな。

「御礼にしては、手厳しい気もするけどな。」
「殺されないだけマシでしょう。」

 ヒカルの言葉に「それもそうだね。」と笑いながら相槌を打つクリス。

「クリス、お喋りはそのくらいにしろ。出撃準備に入る。」

 その言葉に不満そうな顔をする。
 どうやら教主が持ってきた手作りデザートに興味津々といった所のようだ。
 だが、残念だがそれは帰りのご褒美ということにしてもらおう。
 糖分はもう十分教主が来る前にチョコレートで取っているからな。

「もぅ、しょうがないなー。…じゃあ、ヒカルちゃん。行ってくるねー!」

 引き摺られながら元気良く手を振るクリス。
 微笑んで見送る教主。
 その様子はどう見ても友達の家に遊びに行く子供と母親で、昔の寮の風景を思い出す。
だが、あの時とはだいぶ違う。
昔とは違う世界になってしまった。
“喪失”はこの寮の出身者だったのだろう。
そしておそらく……風我が隠している特殊部隊の情報も。






「でも、どの企業から出撃しているのかは表向きには極秘になってるよね。風我ちゃんも知らないのかな?」

「知っているな。風我さんの情報網を侮っては駄目だ。」

「そうなの?」

 黙って頷く。
 風我の情報収集、気配察知能力、どちらもこの時代を生き残るためには重要な物だ。

「じゃあ、ヒカルちゃんに言えない事なのかな?」
「おそらく、そうだろう。」
「……ロストと戦った後ヒカルちゃん、顔を見たらしいのに誰かは言わなかったよね。」
「懐かしい人と会った。としか言わなかったな。」

 焼けた餅のように頬を膨らますクリス。

「聞いたら教えてくれると思う?」
「やめておけ、知ったら後悔するかもしれない。」

 その言葉に納得いかないという風な表情をするクリス。
 隠し事が嫌いなクリスとしては、たとえ後悔する事であろうと聞きたいのだろうが、仕方がない事だ。

「いずれは分かる事かもしれない。それまで納得いかなくても待て。」

クリスの頭を軽く撫でながら自分にも言い聞かせるように呟いた。






「おっし、皆、出撃準備だよー!」

 さっきまで特製デザートが食べれなくて愚痴を言っていたのが嘘の様に元気に動いているクリス。
こういう時は単純なのは役に立つな。
 クリスの言葉にクリス兄妹の部隊『青い疾風』の面々が振り向く。

「隊長、どこまで行くんスか?」

 隊員の言葉にクリスが答えようとする。

「えっとねー…ど、どこだっけ?」

 クリスの記憶力の悪さに思わずため息を吐く。
 覚えていないのに答えようとするな。

「今回はミドリ・エリアだ。各員、武器の最終調整とイグニッションカードに不具合がないかのチェック。陸上戦の装備に切り替えろ。救護班は回復系統と補助系統の装備、応急手当の道具は清潔第一だ。全員、最終チェックを怠るなよ。あと、今回は陸上戦闘になる。最近多い海上戦闘の感覚でうっかり行くなよ。」
「「「「「了解です!!」」」」」

 陸での戦闘は久しぶりだ。
 海の戦いと陸の戦い。
 最近は海での戦闘が多かったからな。久しぶりの陸での戦闘に全員が張り切っているようだ。
 仕方がないといえば仕方がない。
 さて、油断せずに行かなければな。
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  1. 2007/09/20(木) 23:59:59|
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