IF Another despair side:Syugeibu

あってはならない未来。 けれど、ありえなくはない未来。

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El.1

【IF Another despair side:syugeibu】Il est fait le commencement et est le dernier jour(それは始まりにして終わりの日)


【20XX年 封鎖特区 横浜】

 始まりにして終わりの地、鎌倉。
 世界結界はもはや意味をなさず、
 敵性来訪者の来襲、そしてシルバーレインによるゴーストの発生により荒廃した地。
 そのすぐ隣に存在する特区。
 終末のお隣さん、とも揶揄されるもう一つの封鎖特区。
【封鎖特区・横浜】
 この物語は、世界の終りの一歩手前で紡がれる。
 それはまだ、『特区』と呼ばれる隔離地域が出来て間もない頃の話。
 世界結界が壊れて間もない頃、世界は混迷していたがその寮は信念を見失わずにいた。



 政府に隔離地域指定を解いてもらい、自由に出入りさせてもらう。それができないならば、民間人だけでも特区外へ連れ出して欲しい。そう銀誓館学園の生徒を始めとした特区隔離者達が集まり上申書を提出したり、抗議デモを起こしたりしていた。
 しかし、その努力が報われる事はなかった。
 政府の返答はいつも「現銀誓館学園の学生証を持つものは特区内指定区域で待機されよ。また、特区内の民間人の中にも能力者の可能性があるものが居るため、特区外への外出は禁止する」との返事のみだった。






 銀誓館学園から離れた場所にある館の屋根の上に彼女は体育座りで座り込んでいる。
 彼女、月宮・ヒカルは銀誓館学園の経営する寮『木漏れ日の館』の寮長を勤めており、その寮は能力者・一般学生が6・4の割合で暮らしている。
 世界結界が壊れた当時の世界は大混乱だったが、この寮は寮生の結束が固かったため、それほど大規模な混乱は起こることはなく、むしろこれからが恐ろしい時代になる事を予期し、さらに深く結束を強めていた。
 政府は忠誠を誓い、イグニッションカードを渡すようにと通告してきたが、ヒカルは何故そうしなければならないのか分からず、聞いてみた。
 だが、政府はその問いには答えず、寮生を全て特区へと閉じ込めてしまったのだ。
 裏で取引をして特区を脱出する者もいる中、政府の対応に疑問を持ち、なにより寮生を置いていけないと思った彼女は寮に残る道を選択した。
 どこか悲しげな目で遠くを見つめているヒカルは、沈み行く太陽を見つめながら思わず溜息を吐いた。

「ヒカル様、溜息を吐いたら幸せが逃げてしまいますわ。」

 一人しかいないと思っていたヒカルはきょとんとした表情で屋根裏の窓を見つめる。
 そこから自分と同じ銀色の髪の女性が出てくるのを見つけ、表情を和らげる。
 彼女はイリア・ストラフィール。
 この地が特区として封鎖される前に混乱を防ぎ、ゴーストが集まりやすい神奈川を守るために寮に帰って来た元寮生の女性だ。

「イリアさん。皆はどうしています? ちゃんとご飯作れてます?」

 心配そうに訊ねるヒカル。
 いつもは寮長であるヒカルが食事を作るのだが、今日は寮が活動をはじめた日ということで、寮生達に「今日は自分達が作るから寮長は屋根の上で空でも眺めてて。」と言われしまい、おとなしく待つことにしたのだ。

「大丈夫ですわ。皆張り切って作っていますの。ちょっとは皆の料理の腕を信用してあげましょう。寮長のヒカル様から見たら足元にも及ばないと感じるのも仕方がないことですが。」

 イリアの言葉に慌てた様子で「そんな事は無いですよ。ボクが勝手に心配しているだけなのです。」と言うヒカル。
 だが、イリアの意地悪そうな表情にからかわれた事に気がつき、まいったなぁと苦笑いを浮かべる。

「それより、ヒカル様。いつもより、元気がないですわ。どうかしましたの?」

 心配そうな声に「たいしたことではないのです。」と言いつつも瞳を夕日に戻すヒカル。

「ただ、この間政府へ宛てて書いた手紙の返事が返ってこないなと思いまして。」

 政府宛に送った手紙、それはいつもと同じ特区の出入りを少しでも許可して欲しいという内容の手紙だ。
 嬉しくない話だが、今回贈る手紙でヒカルが政府へ宛てて送った手紙は丁度五十枚になった。
 最初の方に送った手紙内容は「特区からの解放」という内容だったことを考えれば随分慎ましやかになっているが、政府の返答は相変わらず「指定区域よりの外出禁止」であった。

「こんな時、天野さん達がいれば良いのですが。」
「そうですわね。冬美様の交渉術はもちろんの事ですが、夏優様の気さくな態度やさつき様の無邪気な性格はこの時代ではとても重要ですもの。」

 特に天野・夏優と鳳凰堂・虎鉄のペアは黄金期と呼ばれた頃の寮ではおなじみの賑やかペアとして有名であった。
 そこに他の人達が悪ノリして、それを遠くから呆れたように見守る人達、あたふたしながら止める寮長。
 ……それが一番楽しかった時間であった。

「あの人達が居ればどんな事でも乗り越えられると、ボクはそう思います。」

 ヒカルの言葉に頷くイリア。

「けれど、今は天野さん達も大変な時期ですから仕方がないですね。」

 苦笑いの中に不安が宿っているのを感じたイリアはヒカルの頭を優しくなでた。

「ですが、会社が落ち着けばきっとこちらに来てくれますわ。その時に、沈んだ顔のヒカル様を見たらきっと、悲しみますわ。」

 元気付けるように言われた言葉に「そうですね。」と笑って頷いた。
 下から甘い香りが漂ってきた事に気がついたイリアは、もうそろそろデザートが出来た頃だろうと思いヒカルに立つように即した。

「いやぁぁぁ!!!」

 突如起こった悲鳴と銃声にイリアとヒカルは駆け出す。

 いつの間にか日は沈んでいた。






 急いで階段を駆け下りキッチンに向かうと、そこはまさに地獄絵図と化していた。
 突如襲ってきた迷彩服の男達になすすべも無く赤に彩られた寮生達。
 すぐに寮生達を避難させようと男達にブラストヴォイスを放つヒカルとイリア。
 それをまともに喰らいよろけた隙に他のイリアが当身をして気絶させ、縛り上げる。
 いくら、襲ってきた相手とはいえ、同じ人間を殺す気にはならなかったのだ。
 相手が気絶している間にかろうじて息のある寮生達を運び出す。

「ひ、ヒカルさん。」
「待っていて下さい!今、直しますから!!」

 ヒーリングヴォイスを歌う。
 血が止まらない。
 もう一度歌う。
 傷が治りきらない。
 もう一度歌う。
 顔が青ざめていく。

「も、もう一度……もう一度です!」

 泣きそうになるのを懸命に堪え、もう一度歌おうと口を開く。

「も…もぅ……無…です。俺…は良…いで……ら。」

 血を吐き出しながら、呟くようにそう言うと、急激に瞳孔が開いていった。



 今息を引き取った彼は良く庭の花を世話してくれた優しい青年だった。
 女性を庇うように倒れる青年は今年彼女が出来たばかりで、告白が成功した時は顔を真っ赤にしていて、ボクもささやかな贈り物をした。
 キッチンで倒れている虚ろな瞳の少女は親元を離れるのが悲しくて、寮でも良く泣いていた。だから、他の子達寂しそうな子と一緒にボクが眠ったりした。
 色鉛筆を持ったまま壁に寄りかかるように眠る少年は、手紙が好きだったので、親への手紙を嬉しそうに誕生日プレゼントの色鉛筆で書く子だった。
 寄り添いうつぶせに倒れるあの兄弟は初めてのゴーストタウンでは緊張のし過ぎで固まっていて、それでも懸命にボクや他の子たちと共に戦っていた。

 あの子は、その子は、この子は・・・・
 全員イグニッションする間も無く殺されている。
 どうして同じ人が?
 同じ世界の人が殺したの??

「ヒカルさん!」
「……イリアさん。」

 呆然としているヒカルを揺さぶると信じられないというような顔でこちらを見つめてくる。
 信じられないのはイリアも同じだった。

「彼等から聞いてきましたの。彼等は、政府の特殊部隊だといっておりましたわ。他の部隊が今、こちらに向かって来ているとも言っていますわ。此処から逃げましょう。急がないと包囲されてしまいますの。」

 その言葉に更に愕然とするヒカル。
 市民を守るはずの政府が何故無抵抗の人間を殺したのか分からないのだろう。
 特にヒカルは最近戻ってきた自分よりもずっと長くこの子達と生活している。
 いわば、家族のような存在なのだ。
 なら、なおさら此処で彼女を死なせるわけにはいかない。
 ヒカルを引っ張り立ち上がらせ、走り出そうとする。

『我々は政府の者だ!政府への反逆容疑で君達を逮捕する!』

 外からスピーカーの耳鳴りのような音と共に声が聞こえた。
 早すぎる到着にも驚いたが、それよりもその声の内容に唖然とするイリア。
 自分達が反逆罪?
 何故、そんな事になっているの!?
 あまりの突拍子も無い言葉に開いた口が塞がらない。
 ヒカルの方を向くと、彼女も同じなようで「そんな……。」と呟いていた。
 外は既に囲まれている。
 イリアはヒカルを連れて、キッチンにある小さな秘密部屋に入った。
 此処は特殊な入り口になっているので、そう簡単には見つからない。
 もしかすると、見逃すかもしれない。
 深呼吸しながら頭の中を整理する。
 イリアから見た寮はどう考えても国家反逆などしているようには見えなかった。
 第一、ヒカルの性格上そんな事は考えられない。
 ならば何故反逆者ということになったのだ?

「……まさか。そんな馬鹿な事。」

 イリアはまさかと思い頭に浮かんだ結論を追い出そうとする。
 だが、考えれば考えるほどその答えにしか辿りつかなかった。

「イリアさん?」

 ヒカルもそんな様子をおかしく思ったのか戸惑いながらもこちらを見ていた。

「ヒカル様、これはわたくしの勝手な思い違いかもしれません。でも、お聞きください。」

 イリアの言葉にヒカルは喉を鳴らした。



「そ、そんな事!? そんな事は…」

 イリアの考え出した政府の考えはあまりにも身勝手なことだった。
 政府は自分達に都合の良い能力者だけを生かし、その他の『危険分子』を排除しようとしているのではないか。
 それがイリアの結論だった。

「ありえなくないですわ。第一、イグニッションカードを取り上げる。それに疑問を抱いたヒカル様が特区に閉じ込められた。……この結論なら全ての辻褄が合いますわ。」

 いきなり特区などというものを作った時点でおかしいと感じていた。
 そして、能力者の徹底管理やそれに疑問を抱いたものの排除。
 銀誓館学園の生徒だと言うだけで拘束されているという話もたくさん聞く。
 その疑問はこの結論で十分片付くのだ。
 実際、イリアの言った仮説は大正解だった。
 今までこの結論に辿りつかなかったのは、おそらくヒカルやイリアといった疑うことを知らない存在ばかりだろう。



 隠し部屋の外が騒がしくなった。

「なんて運の悪い。」

 見つかってしまった事を悟ると、インカムに手を当てる。

「ヒカル様、今まで気がつかなかったわたくし達はかなりお馬鹿さんだったようですわ。」

 自嘲気味に言うイリアと手を力いっぱい握り締めるヒカル。
 それを視界に入れると構えた。

「多勢に無勢、おそらく一秒も持たないと思いますが、せめて少しは痛い目にあわせて差し上げましょう。」

 ウィンクしながら言うと、青ざめた顔を少し和らげて微笑まれた。

 隠し扉が開けられる。

「せめて一矢報いて差し上げないと、寮の皆様に笑われてしまいますわね。」

 そう呟くと走り出した二人。






 無機質なキッチンの明かりの下で、潰れたケーキが食べてくれる人を待っていた。
 そのチョコレート板には文字がかかれており

『木漏れ日の館創立  年おめでとう』

 と言う文字が、真っ二つに折られていた。

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  1. 2007/09/23(日) 02:08:53|
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