IF Another despair side:Syugeibu

あってはならない未来。 けれど、ありえなくはない未来。

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El.2

【IF Another despair side:syugeibu】Les conditions survivre(生き残る条件)


【20XX年 封鎖特区 横浜】

 始まりにして終わりの地、鎌倉。
 世界結界はもはや意味をなさず、
 敵性来訪者の来襲、そしてシルバーレインによるゴーストの発生により荒廃した地。
 そのすぐ隣に存在する特区。
 終末のお隣さん、とも揶揄されるもう一つの封鎖特区。
【封鎖特区・横浜】
 この物語は、世界の終りの一歩手前で紡がれる。
 それはまだ、『特区』と呼ばれる隔離地域が出来て間もない頃の話。
 あまりにも理不尽な殺戮があった。
 これは、その後の出来事の一部を綴った物語。



 その男は軍に入ってから五年の新米を抜けたばかりの青年。
 夢を持って軍に入った青年は今回の任務に辟易としていた。

 少し前に起こった世界大異変。
 その後の軍隊は来訪者と呼ばれる敵を倒す事が多かった。
 だが、能力者と比べると軍はかなり弱い。
 使うごとに悪い部分は解消されていき、現在ではようやくまともに戦うことの出来る装備が出始めたばかりだ。
 それでも、青年にとってはそういう危険を冒して市民を守ることが誇りであったし、胸をはれる事だと思っていた。
 しかし、今回の事件はあまりにも一方的なものだった。
 政府からは反逆者の抹殺という風に聞かされどのような極悪人かと思い、いざ突入してみるとなんという事の無いガキ達だった。
 しかも、突然現れた俺達に対処する事も出来ずに叫び声を上げながら血の海へと落ちていく。
 これの何処が『凶悪な反逆者』なんだ!?
 その後現れた女の二人組みに気絶させられ、起きた時には全てが片付いていた。
 俺は今、その事後処理をしている。
 現場にはどう見ても鑑識ではない怪しい科学者風の男達が闊歩しあちこちを調べている。
 どう考えてもおかしい。何かが変だと考えるには十分だ。

「亀井と桜木二名は隠し部屋から出てきた二人を処理しろ。」

 隊長の言葉に新米である亀井と共に修道服の女の方に向かう。
 遠くから見てもその女が死んでいるのは分かる。
 だが、一応確認として確かめる。
 想像通りだった。
 近くに倒れている女に近づく。
 確認してみる。
 かすかな音が聞こえた。
 ……こいつ、息があるのか?
 心音を確かめる。

「……こいつ、まだ生きてるぜ。」

 俺の言葉に亀井が驚いた表情をする。

「マジか!?うげー、そんなに穴だらけなのによく生きてますね。」

 亀井の声にリストと顔の確認を取っていた隊長が此方にやって来た。

「そこの二人!何を無駄話しているんだ!!仕事に戻れ!!」

「いえ、隊長。この女、まだ息があるみたいでして。」

「ほぉ。これだけ弾丸を食らっていながら生きているとは。」

 隊長も感心した様子だ。
 そりゃそうだろう。
 誰がどう見てもひ弱な女がこんなに蟻の巣みたいに穴ぼこだらけにされて生きてるんだ。誰だって驚く。
 実際、さっき確認したこの女の近くに倒れていた、もう一人の修道女のような服装の女は死んでいたしな。

「とどめを刺しますか?」

 亀井が女に標準をあわせ構える。

「待ちたまえ。」

 引き金を引こうとしたその瞬間、白衣の男に止められた。

「この女、生きているのか?」

「はい、かなりの出血が見られますがまだ息があります。」

 敬礼して言う隊長の言葉に白衣の男は興味深そうに女を見ると「……止血をして施設へ運べ。」と言った。
 すぐさま隊長が簡易的な止血を女に施す。
 亀井はまだ新米のため、隊長の行う戦い方や応急処置の仕方を見て学ばなければならない。
 俺は止血が苦手なのでタンカを無線で呼ぶ。

「4~5分で来るそうです。」
「そうか、なら呼吸停止しないかどうか随時確認していろ。意識がはっきりしているかも確認するんだぞ。」

 命令に返事を返すと手袋を手早く外し、女の口元に当てる。
 か細いがまだ呼吸がある。
 意識はあるとは思えなかったが確認してみる。

「聞こえるか?」

 肩を叩き聞く。
 嫌な感触に目線をずらすと、肩に穴がいくつも開いていて一部が削り取られている。
 よくこれで生きているものだ。
 もう一度確認するが、反応がない。

「意識は無いようです。」

 隊長に報告すると呼吸を再度確認する。
 呼吸は先程より少し弱くなったがまだ息をしている。
 止血が終わると白衣の男達がタンカで運んでいく。
 あの不気味な男はまだ残るのか。
 そう思いながら死体の回収を続けようと。 修道服の女の方を向くと先程の男が視界に映った。
 修道服の女のつけているインカムを興味深そうに眺めて、女に近づいていく。
 白衣が紅く染まる事も厭わずに女の傍にしゃがみこみ、インカムを剥ぎ取る。
 おそらく研究サンプルにするのだろう。ニヤニヤと笑うと血で染まるインカムを透明の袋に入れた。
 胸糞が悪くなり、白衣の男を一瞬睨むと視線を外した。
 修道服の女と目が合った。
 そんな目で見るな。俺だって理不尽だって思ってるんだよ。
 もちろん死んでいる事は確認済みだ。俺が死んでいるのを確認したんだからな。
 右目と心臓にくらった一発のどちらかが死に繋がったのだろう。
 もちろん他にも先程の女と同じくらい穴だらけで、まるで蜂の巣状態だ。……キッチンに倒れていたガキ達もな。



 キッチンに戻ると、回収が終わったのか大量の血痕と血だまり、銃の抉った痕を残しているだけだった。
 お盆に置いてあった潰れたケーキを見る。
 チョコ板が割れて年が見えないがどうやら記念日だったようだ。
 記念日に殺されるなんて運の悪い奴らだ。
 手袋を外した手で舐めてみようと手を伸ばす。
 あぁ、さっきの女の血がついてたんだっけ。
 手を拭く布巾に手を伸ばし……やめる。
 この空間を荒らした自分が布巾で手を拭うのはだめな気がしたからだ。

 おそらくあの連れて行かれた女も実験台にでもさせられて人生終わるんだろう。
 回収された奴らも解体したり、ホルマリン漬けが良い所だな。
 苦しい思いして人知れず戦った子供達、寮生のために危険なのを承知で残った寮長の少女と修道服の女性、結局は同じ人に裏切られ殺されて、モルモットみたいに扱われる。
 …………悲惨な人生だこって。
 もう片方の手袋を外しケーキの一部を食べてみる。
 うん、なかなか美味い。……これ以上いる必要はねぇな。
 用が終わったから立ち去ろうとキッチンを出て、玄関へと向かう。
 入ったのは裏口だったが出る時は『やましい事など無い』というアピールの為に表から出ろって言われたからだ。ハッ、鼻で笑っちまうぜ。
 政府からの発表は考えなくても分かる。隠蔽と捏造ばかりの嘘っぱち事件として汚名を着せられてメディアに流されるんだ。
 煮え切らない気持ちを抱いて広い食堂を通っていると、写真が飾ってあるのが目に入り思わず立ち止まる。
 あぁ、これは殺されたガキ達の写真だな。館をバックに撮っているみたいだ。
 こっちの少し古そうな写真に写ってるのはあの修道服の女と連れて行かれた女の学生時代の写真か?
 あぁ、あいつら、こんな風に笑うんだな……。
 思わず天井を見上げる。
 蛍光灯の光が滲んだ瞳に当たり眩しい。
 くそ、鼻の奥が熱くなってるぜ。
 ……軍に入ったのだって人を守るためだったっけ。



 この仕事を辞めるか。今なら再就職先もあるだろ。






 様々な機械や薬品が並ぶ窓一つ無い実験施設。
 全体的に薄暗くしている施設だったがその部屋だけは恐ろしいほど白い無機質な世界だった。
 その部屋の中心には透明な宝石をちりばめたように輝く水を入れた様々なチューブが繋がっているカプセルのような機械が置かれている。
 カプセルの中には銀色の長い髪の少女が一糸纏わぬ姿で入れられていた。
 部屋の側面はミラーガラスになっており、その向こうから何人もの白衣を来た人間が計測器などを見てデータを取っている。

「サンプルの生命力もさることながら、急所をギリギリ外れていたのと、これが心臓を守ったようです。」

 血でべっとりと濡れたペンダントを透明な袋から二つ取り出す。
 これは先日漸く研究所に渡す気になった政府からの贈り物だ。

「これは……遺骨ペンダントか。」

 ペンダントを目の前に持ち上げながら呟くやせ細った体つきの博士。
 彼は瀬戸内・孝祐(せとうち・こうすけ)博士。このプロジェクトの最高責任者だ。
 この研究は【L計画】と呼ばれ、人間の更なる進化を目指す為の実験だ。

「遺骨ペンダント……ですか?」

「あぁ、故人の骨を入れておくためのペンダントだ。だとすると、こっちのダイヤモンドはおそらく毛髪で作るハートイン・ダイヤモンドだな。」

「博士、良くご存知ですね。」

「研究資料として読んだことがあるのだよ。君もその位一般人ですら知っている知識なのだから覚えたまえ。」

 見下された言い様に顔が引きつりそうになるが、言われた事は正論なので反論もできなかった。
 第一、この人はいつもこういう話し方だ。いちいち気にしていたらやっていけない。
 自分に言い聞かせると深々と頭を下げる。

「も、申し訳ありません。」

 瀬戸内博士は気に入らない部下をクビどころか実験に使う事でも有名なため、急いで謝らないと私も部屋の中の彼女のようにモルモットにされてしまう。
 頭を上げると博士は既に部屋から出て少女の部屋の中に居た。
 許してもらえたと言う安堵の気持ち半分、無視されて腹立たしい気持ち半分だった、とりあえず許してもらえた事を喜ぼう。
 カプセルの少女を見つめる。
 溶液に含まれる成分で強制的に眠らされている少女。
 彼女は特区横浜の政府反逆の首謀者だ。
 木漏れ日の館と呼ばれる屋敷に立てこもり、能力者である事を盾に政府に強硬手段を取ったためやむなく排除した……という風に世間一般に流された。
 けれど私は、そんな事をしても無意味ではないかと思っている。
 あの事件から数ヶ月たった今、インターネット上でもあちこちであの情報はデマなのではないかとまことしやかに噂されているからだ。
 その上、反逆をしていたと言う物的証拠が何一つ無いのだ。
 強硬手段の内容はまったく教えられず、そのような情報だけ流されても世間は納得してくれないだろう。
 まぁ、政府がどうなろうとこの研究が続けれさえすれば良いのだが。

「数値が安定してきたようだな。もっと溶液の割合を増やせ。」

 博士の言葉に眉をしかめる。
 今の割合でさえ人体に多大な負担を与えているのに、これ以上与えては人体にどのような影響を与えるか分からない。
 せめてあと数日間をおかなければ。

「博士、ですが……。」
「なんだね? 拒否するつもりかね?」

 博士の眼鏡が光を反射し不気味に光った。

「……いえ、数値を上げます。」

 割合を1:9から2:8に増やす。
 しばらくは何事も起きなかったが、十分経過した頃、予想していた通り異変が起こり始めた。
 静かに眠っていた少女の体が激しく動き、苦悶の表情を浮かべ拒絶反応を示している。
 脳波も乱れ、計測器が大きく振り子のように揺れる。
 だがそんな事は博士にはお構い無しのようで、無意識のうちに逃れようとする少女から発せられる振動に近づいて観察している。
 しばらく苦悶の表情でいた少女はしばらくすると大人しくなった。
 正確には大人しくなったのではなく、カプセルは能力者用に強化されている特殊な素材で出来ており、内部からの振動を感知すると強力な安定剤を注入する事になっている。
 なので強制的に大人しくさせられていると言うのが正しいだろう。
 大人しくなった少女とそれを穴が開くほど見つめている博士から目を離し、計測器のデータを書き留めていく。

「おぉ!これは!!」

 突如大きな声を出した博士に肩が跳ね上がる。

「ど、どうかいたしましたか博士。」

 隣の男が突然の大声に恐る恐る博士に内部通信で聞く。

「自己修復能力が向上している。これは素晴らしい!あの時の傷がほとんど消えてしまっているぞ!」

 我々の言葉を完璧に無視しながらカプセルの操作をしていく。
 新しい傷を手動操作ロボットで作る。
 急激に傷が消えていく。

「す、素晴らしい!」

子供のように何度も傷を作り、感知する様子を観察し続ける博士に薄ら寒いものを感じながら、研究結果を録音するボイスレコーダーのスイッチを入れる。



『○月×日、溶液の対比を1:9から2:8へ変更。自己再生能力の向上が見られる。24箇所の傷跡は跡形も無く消えた模様。新たな傷の即座完治確認。脳波の乱れあり、拒絶反応レベル3。初期の拒絶反応レベルは起こらず。実験目標再確認。最終段階はカプセルを溶液で満たすこと。注意事項、溶液は替えが効かないため保存、持ち運びには十分気をつけるように。万が一割ってしまったら二度と作成は不可能。実験被験者、性別:女。年齢(博士の笑い声にかき消される)氏名:月宮・ヒカル。』

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  1. 2007/09/24(月) 20:33:41|
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