IF Another despair side:Syugeibu

あってはならない未来。 けれど、ありえなくはない未来。

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Le.17

【IF Another despair side:syugeibu】不利益の予防線


【20XX年 封鎖特区 横浜】

 始まりにして終わりの地、鎌倉。
 世界結界はもはや意味をなさず、
 敵性来訪者の来襲、そしてシルバーレインによるゴーストの発生により荒廃した地。
 そのすぐ隣に存在する特区。
 終末のお隣さん、とも揶揄されるもう一つの封鎖特区。
【封鎖特区・横浜】
 この物語は、世界の終りの一歩手前で紡がれる。










ひらひら
ひらひら
紅が舞う
暗い闇を蝶が舞う
右にひらひら 左にひらひら
くるっと廻り見えなくなって
やっと見えたと思ったら
するする
するする
降りてって
あらま、大変行き止まり
少し止まった紅い蝶
なにやら闇を触ってる
そのまま闇に留まったら
闇が蝶を食べちゃった



「相変わらず此処は眩しいし上と同じくらい別世界ね。」
眩しい光に一瞬くらっとする。
人工的な光
先程の闇の先とは思えない光あふれた場所。
一面の緑
野菜や米、果物など様々な食料がこの地下で作られている。



ここは昔、ある人間が秘密裏に核シェルターとして作られていたらしくゴーストタウン化するまでは核シェルター施設として動いていたらしいが、そんな過去設定は風我には関係ないし世間的にもまったく知られていない。
迷路には思いもつかないような場所に出口があるがそれもこの話とは関係ないので省こう。
言わなくても分かるかもしれないが、此処はエリア・カナザワの本部の地下だ。
木漏れ日の館の地下施設は巧妙に隠されており、過去この館で起きた凄惨な事件で政府が立ち入った時もついに見つかる事はなかった。
(防護シェルターの役目も果たせるのは便利だし、迷路みたいなつくりだから気がつかないし、発電システム密かにあるらしいし、丈夫だから崩れる心配ないし、凄い要塞よね。まるでこういう事をするために作られた場所みたい)



風我は野菜の出来を見ていた“教主”に近づく。
すれ違ったふくよかな女性にお辞儀される風我。
彼女も保護された人間だろうか、自分の仕事に誇りを持っている人間の目をしている。
「どう? 今回のも美味しく出来てる?」
微笑を風我に返す。
「そう、それは良かったわね。」
「はい。」
紅い蝶として黒の女神は笑った。
“教主”が歩き始めたのでそれにあわせて歩き出す。
“教主”が通ると作業の手を止め一歩下がる人々。
(うーん、そんな羨望の目で見られても困っちゃうわね)
風我に限らず“教主”の傍に立つ事の出来る騎士達は羨望のまなざしで見つめられる。



『庭園』という組織は様々な人で構成している。
この施設に勤めているものも『庭園』のメンバーだ。
その構成は所属隊ごとに違ってはいるもののどれも普通の一般兵は制服を着ており、“教主”に謁見する時は所属隊のシンボルと『庭園』のシンボルを身に纏っていなければならない。
制服もシンボルもなしで“教主”と対面して良いのは『The knight who serves a goddess(女神に仕える騎士)』と呼ばれる者達だけだ。
(それにしても、誰がそんな呼び名考え出したのかしら?)



栽培室を出て階段を上り、『応接室』と書かれた部屋へと入る。
「クリスちゃんとレイン君がエリア・ミドリに進行させるつもりなんですって?」
ポットにお茶を二つ入れてソファーに腰をかけ、話を切り出す風我。
「はい。あそこの実験施設を破壊してもらおうと思いましたので行ってもらう事にしました。」
スーパーに買い物に行ってくれくらいの調子で肯定した。
「その事がどうかしましたか?」
「ん? ちょっと気になる情報手に入れてね。」
首を傾げる“教主”に手を振りながらテーブルに置いてあった茶菓子をつまむ。




+ + + + + +




「金髪の修道士を空港で見かけたー? なにそれ、それがどうかしたの? つーか、むしろアタシ的にはアンタがそんなところで何をやっていたのか聞きたいけど……ふーん、なるほどね。アタシもその噂は聞いてたけど、随分こっちの国嫌いになったみたいな感じだったじゃない? なんでいまさら帰って……そうか、そういう理由ね。ごめん、アタシの独り言だから気にしないで。とりあえず情報ありがとね。そっちも色々忙しいだろうけどがんばって。」
携帯を切る。
メッシュの髪をくるくると回す。
(とにかく、もしもアタシの考えが当たってるならすぐに情報が手に入るはずよね。調べてみますか)
善は急げ。
早くすっきりさせようとノートパソコンを起動した。




+ + + + + +




「って訳でその情報の直後に政府が外国から能力者を入れてきたって情報があったから気になったんだけど、相手の確証を得るにはもう少し待ってもらわなきゃいけないわ。でも、一応“教主”ちゃんの方から何かしてくるかもって言っといてね。」
一息ついてお茶を一啜り。
「わかりました。」
“教主”も一啜り。
「結構エグイ噂も入ってるから、もしもの事を考えて用心するに越した事はないのよね。今のあの子が噂どおりなら大量虐殺とか平然とやると思うからさ。もし進軍先で住民が大量虐殺とかそんな感じになってたらまずいでしょ?」
微笑みの中の虚無が深くなる。
「もし、相手に脳みそが少しでもあるならウソの情報とかで混乱させられたりするし、万が一『庭園』にさっき言ったような虐殺とかの罪着せられちゃったら不味いでしょ? ま、返り血一つ浴びずに大量虐殺は物理的に無理だからって言えばそれで済むけどね。たとえ罪を着せられなくても、コミュニティーの人間を虐殺とかすると頭に血が上って相手の意図に気がつかずに突撃する可能性あるし。特にコミュニティーは近場のコミュニティー2~3で巨大家族みたいになってる所があるからそういう場面になったら政府に攻撃しかねないし、そうなったら”番人”達に抑えて貰わなきゃいけないし。事後処理の外への情報はまた親切な『誰か』が真実の情報を流してくれるから大丈夫だけども。」
ニコリとまるで他人が流しているかのように白々しい笑顔で言う。
「どんな状況になってもコミュニティーの人間を殲滅する理由を政府に与えるのは論外だから、進軍してる“番人”と”弾丸“には絶対伝えておいたほうが良いとおもうわ。罠にかけられるかダシに使われる可能性を考えてね。」
「情報ありがとうございます。」
お礼を言う“教主”。
「良いの良いの。アタシってダシに使われるとかそういうの嫌いだから。……別にしいたけは嫌いじゃないけど。」
“番人”に警戒するようにと言っていた為、最後の方は聞き取れなかった“教主”は首を傾げた。
気にしないでと手を振ると、話を戻す。



「”弾丸“はあの性格だから簡単に引っかかるかもしれないけどまず”番人“は引っかからないでしょうし、熱くなって突撃とかありえないけど警告するに越した事は無いからね。」
「そうですね。レインさんは鉄の精神を持っていますから大丈夫でしょう。」
「優しいけど、甘くなくて、絶対公私混同しない男って良いわよね。」
「でも、帯刀さんも公私混同はしないですよ?」
首を傾げて身近な人間を上げる。
「あいつが優しいのは“教主”ちゃんにだけだから論外。」
やっぱり良く分からないといった風の“教主”。
まぁ、わからないのは仕方が無い。
「そんな事よりこの間さ、コミュニティーでなかなか可愛い子を見かけちゃってさー…。」
語尾にハートマークをつけそうな勢いで世間話をし始める風我を優しい表情で”教主”が聞いている。
その後も色々と話をした。
牛からミルクがとれただのうざったい男のあしらい方だの子供達に読んでいる絵本の内容だのどれも戦いとは無縁の内容で盛り上がっていき、一時の休息を楽しみながら蝶と女神の茶会は和やかに進んでいく。

こんな会話が話題の中に入っていた事も一応明記しておこう。

「風我さんは、どうして二つ名がないのでしょうね。」
話が終わり静かにお茶を飲んでいた“教主”が呟いた。
「んー。でも別に特区で生きてたら絶対つけなきゃいけないものじゃないし、二つ名なんて自然につくものでしょ?」
「でも、前は“女狐”さんって呼ばれていたじゃないですか。」
眉をしかめてため息を吐く。
「あー、それね。いくらなんでも失礼よね。よりにもよって『女狐』とか……否定しないけど。よりによって二つ名にされるとかありえないわ……ま、そのうちつくんじゃない? アタシは別についてもつかなくてもどっちでもいいけど。」
話を締めくくり、お茶菓子を一つ口に放りこみ、次の話題へと移った。




+ + + + + +




「あー、そういえばヒカルちゃん。」
ガラス越しから見える栽培室をチラリと見た風我がふと顔を上げた。
手は”教主“の髪を梳き続けている。

この髪梳きはいつからか始まった行為だ。
風我の髪は短く、梳く甲斐が無かったので冗談半分で“教主”に頼むと意外とあっさりと許可がもらえた。
“教主”の髪は予想通り梳きやすく、触り心地が良かったので本部に来るたびに梳くようになった。
もっとも、それも“死神”に睨まれる要因の一つになってしまうのだが。

「はい?」
「あんな人此処に居たっけ?」
良く分からなかったのだろうか首を上に向けた。
「あんな人?」
「ほら、最初にアタシがすれ違ったおばちゃんよ。」
髪を梳きながら説明する。
さらさらの髪質でとても触り心地が良い。
「…………。」
思い出そうとしているのか黙っている。
「最近新しく入った隊員にもあんな人はいなかったと思うけど?」
梳き終わり、髪を整える。
型崩れはまったくしていない。
そういう髪の薬品は使っていないので当然だ。
「…………。」
黙ったまま微笑を浮かべる。
梳き終わった髪にベール付の帽子を被せる。
「それに、政府の諜報員のリストに似たような顔を見た事があるのよね。」
諜報員という言葉を聞くと表情をまったく崩さずに口を開いた。
「せっかく一生懸命働いてくださっているので、少し居てもらっているのですよ。」
“教主”の意図を一瞬で考察する、理解する。
OK、そういうことね。
「そう、じゃあせいぜいその時まで此処で頑張って働いてもらっちゃおう。」
「はい。」
紅い蝶と黒の女神は顔を見合わせて笑った。
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  1. 2007/09/29(土) 16:36:48|
  2. 番外編
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