IF Another despair side:Syugeibu

あってはならない未来。 けれど、ありえなくはない未来。

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El.9

【IF Another despair side:syugeibu】会合と邂逅


【20XX年 封鎖特区 横浜】
始まりにして終わりの地、鎌倉。
世界結界はもはや意味をなさず、
敵性来訪者の来襲、そしてシルバーレインによるゴーストの発生により荒廃した地。
そのすぐ隣に存在する特区。
終末のお隣さん、とも揶揄されるもう一つの封鎖特区。
【封鎖特区・横浜】
この物語は、世界の終りの一歩手前で紡がれる。










【特区外・AC社】

約束の日、夏優に会う為に風我・翔護・レインの三人はそれぞれの方法でAC社内部に潜入した。
翔護とレインは闇纏いで姿を消しながらそれぞれ別々の場所からなるべく誰にも気づかれないように社内に入り、風我は顔を別人に摩り替えるために特殊マスクを作りそれを被って誰にも気づかれず監視カメラの死角を利用して潜入し、以前に特殊ルートで入手したAC社の社員プレートの模造品をつけて待ち合わせの場所に歩いてきた。
待ち合わせの男子トイレに先に来ていた二人は風我が来たので寄りかかっていた壁から身を起こす。
「アタシも魔剣士になって来ればよかったかも。」
ぼやきながら溜息を吐く。
「仕方が無いじゃないですよ、貴方は魔剣士向きじゃないです。」
「でもさー、一々潜入に下準備しなきゃいけないのは面倒くさい。」
「ならば、会談場所をAC社にしなければ良かったじゃないですか。」
「だってそれだと感づかれちゃうかもしれないしー。それに……」
「それに……どうかしたのか?」
いきなりレインに声をかけられ驚きで肩が跳ね上がる二人。
「い、いきなり喋らないでよね。」
「貴方は不意打ちが多すぎます。」
「む……それはすまない。」

「でもやっぱり二人とも楽に潜入しすぎ。」
ブツブツと文句を言いながらも歩き出した風我に顔を見合わせ呆れた顔をしながらついていく翔護とレイン。
待ち合わせの部屋の前に来ると一度立ち止まった風我。
「どうかしましたか?」
翔護の言葉に
「ん?ちょっと……ね。」
と笑い取っ手を三度撫で、会議室と書かれた部屋の扉を開ける。
中には既に夏優が席に座っていた。
風我達も向かい側の席に座る。
「皆、久しぶりだな。」
「そうね、お久しぶり。」
「本当は冬美とさつきも話に参加したかったと言っていたんだが、あいにく急な仕事が入ってしまったんだ。」
「そっか……二人にも久しぶりに会いたかったんだけど、残念ね。」
「そうですね。卒業以来殆ど会う機会もありませんでしたし、なにより世界がこんな状況になってしまってからは尚更会いづらくなってしまいました。」
微笑みながら返す翔護を見て、ほっと胸を撫で下ろす風我。
レインの無言で会釈している様子を見ると、二人とも随分と落ち着いた様子だ。
(二人とも、随分落ち着いたみたいね。良かったわ)
最初会った時のピリピリした空気は薄れていたため、会話を切り出しやすかった。
「協力要請の件、返答は決まった?」
「協力はする……だが、表立って動くことは出来ない。其方が必要な情報を極秘に提供するつもりだ。」
返答にあからさまに眉を顰める翔護とほんの僅かに瞼を震わせるレイン。
想定はしていたからこそ掴みかかる事は無かったものの、無表情に近い冷静な表情で言われるとさすがに気分が悪くなるのだろう。
「その判断はちゃんと冬美ちゃんとさつきちゃんも知っているのね?」
「あぁ、かなり怒られて渋られたけどな。」
その時の事を思い出したのか疲れたような溜息を吐いた。
「最悪の場合協力を断られると思ってたから情報提供だけでもありがたいわ。むしろ大変な状況なのに手伝ってくれてありがと。」
「いや、こちらこそすまないな。しっかりと手伝いたかった。」
「仕方ないわよ、夏優ちゃんにも立場があるでしょうし。」
ニコリと笑って御礼を言うと苦笑いを返された。
風我は誰にも言わなかったが、もし夏優が完璧に政府側についていた場合、政府が待ち構えているかもしれないと想定すらしていた。
その為、もしもの事を考え社内のあちこちに蟲を仕掛けていたし、退路を塞がれない様にする為ドアノブの裏側にも蟲を仕込んでいたが、徒労に終わった。
なにより夏優の今の立場を考慮すると、今回の情報提供は風我が想定していた中で最上の提案になる。
それを喜びこそすれ、なじる気持ちなど持ち合わせては居ない。
……分かってはいても腑に落ちきれていないのが翔護だが。
(でも、夏優ちゃんの中でまだヒカルちゃんを好きな気持ちがあるのね)
なるべく客観的に考え、一歩引いて行動しようとしているようだが、風我にごまかせるものではない。
夏優の瞳には表立って手伝えない事による無念さ。
愛しき者の命を弄んでいる政府への怒り、安否を願う心。
それらの気持ちが渦を巻いているのが見える。
「アタシ達が欲しいのはアタシが九つの施設のどれにヒカルちゃんが居るかの特定。施設内部の設計図の複製。警備兵の巡回場所と警備交代時間。できればヒカルちゃんが居る部屋も知りたいけど、それを確実に知るにはヒカルちゃんの実験現場を実際に見なきゃいけないから無理ならしないで良いわ。」
実験現場という単語に全員から動揺の気持ちが見えた。
特に翔護は政府への憎しみを露にしている。
レインにとってヒカルは親戚であり、恩人であり、主である存在。
憎しみよりむしろ守れなかった事への悔恨の情が強いのだろう。
夏優は憎しみと悔恨、両方が渦を巻いている。
そこで風我は、夏優達が創立パーティーの招待状貰っていた事を思いだした。
寮の人間で連絡がつく人間はそう多くない。
翔護やレインあちこちを回っていたため連絡が取れなかっただろう。
風我は一応連絡を取り合ってはいたし海外で動いている雷覇にも連絡は取れただろう。だが、風我達のやっている事を大体教えられていたヒカルはそれを邪魔しない為にも連絡は控えてくれていた。
つまり、招待状が貰えて尚且つ助けられたのは……
「うっわー、そりゃ悔やむわ。アタシだってかなり悔やむし。」
「何か言ったか?」
小さく呟いた風我の言葉をたまたま聞き取ったレイン。
「なんでもない。ちょっと独り言よ。」
笑ってごまかし、話題を戻す。
「ま、これがアタシ達の欲しい情報ね。」
提案された条件を吟味していた夏優はおもむろに顔を上げた。
「……わかった。全ての情報を手に入れる。」
「夏優ちゃん、ちゃんと全てを調べれる?全部って事はヒカルちゃんの場所の確定もするって事よ。」
「あぁ、わかってるさ。」
「無理だった場合はやめておけ。」
レインの言葉に大丈夫だと笑う夏優。
だが、その表情はどこかぎこちなくなっている。
今まで黙っていた翔護が無言のまま夏優に近づいていく。
その有無を言わせぬ様子の翔護に全員が黙っていると、夏優の胸倉を掴み睨む。
さすがに不味いだろうと思い、立ち上がろうとした風我はレインに止められた。
『黙って見ていよう。』
その無言の言葉に仕方なしに座りなおす。
夏優も翔護の行動に一瞬驚いたが何も言わず動かなかった。
「私は、貴方なんて正直嫌いです。学生時代はいつもいつもヒカル様との時間を邪魔してくれましたし、何をするにも貴方が立ちはだかって結局在学中も卒業後もあの方に思いを告げる事は出来ませんでしたし、私にとって貴方は百害あって一利なし。いえ、一千害あったって一利もないでしょう。」
突然恨み言のような言葉に風我は唖然とした。
「奇遇だな、俺も帯刀と同じ気持ちだぜ。おまえがいなけりゃ俺だってヒカルちゃんに告白してたさ。俺が告白できなかったのだってお前が邪魔したからだ。むしろ一万害あっても一利あるわけない。」
そう言いながら学生時代の恨み言を言い合い始める二人にさすがのレインも呆れた様子で溜息を吐いていた。
その言葉の応酬は傍から聞くととても低次元で、昔と変わらぬ言い合いだった。
「ですが。」
突如言葉を切った翔護に怪訝そうな顔で見る夏優。
呆れから立ち直ったレインと風我も言葉の続きを待つ。
「私は貴方を信用していないわけではありません。貴方も私も共にヒカル様を想った身ですから、それが如何に忌々しい事でもその事実は変わりませんし、だからこそ私は貴方を信用します。いまだ貴方があの方を愛している事がわかるからこそ貴方を……天野夏優を信用します。」
だから何があってもヒカル様を裏切るな。
そう翔護の目は語っていた。
黙って聞いていた夏優は胸倉を掴んでいた翔護の手を振り払い、三人から背を向ける。
「……そんな事言われなくても分かっているさ。責任もって帯刀達の信頼に応えるよ。」
「では私達はこれで失礼しましょうか、風我。」
突然声をかけられて反応が遅れる。
「あ……そうね。じゃあ、アタシ達はこれでおいとまするわ。特区に向かう準備もしなきゃいけないし。連絡手段はアタシの蟲を置いていくからその子に情報を教えてあげて。設計図の複製は手に入れたら何処か別の場所に隠して、蟲に隠し場所を教えて頂戴。じゃ、夏優ちゃんバイバイ。」
背を向けたままの夏優に小さな蝶を何体か渡し、既に退室した翔護とレインを追いかけるように風我も足早に出て行った。
「信用している……か。わかっているさ、そんな事。」
誰も居なくなった会議室で言った呟きは、誰にも届かなかった。




+ + + + + +




夜の誰もいない空き地に見える三人の人影。
彼らは人目を忍ぶように倉庫裏にいた。
三つの木箱の上に座っている彼らは待ち人を待っている。
「時間まであとどれ位です?」
「んー、あと五分ちょい位ね。」
「風我、その男は本当に大丈夫ですか?」
「だいじょーぶ。出るのも入るのも難しい特区だけどその人、最近特区の施設で働いてるらしくてさ。結構重要な施設らしいから一緒に壁を通っても調べられないんだって。前もそれで人を一度通した事があるって言ってたわよ。」
「随分と、重要人物なんだな。」
レインの言葉にそうみたいねと肩を竦める。
「それに、今回通る『壁』の門兵も知り合いだし」
「何時の間にそんな人物達と知り合いに?」
怪訝そうな目で風我を見る翔護。
「ネットの友達よ。結構お人よしみたいでさ。仕事の愚痴とか上司の嫌味さとか聞いてあげたら結構気があってさー。仲良くなっちゃったのよ。門の兵士もさ、その上司と一度だけ会った事があるって言ってて、どっちも面白い人でさー。意気投合しちゃったのよね。」
「ちなみに会うのは?」
「今日で三度目ね。前に二度酒を飲みあった仲よ。」
「その顔で……ですか?」
「まーね。アタシ、今は顔を見せる事の方が少ないもの。」
そう、今風我の顔は完璧に別人の顔になっている。
風我だけではなく、翔護もレインもカツラとカラコン、風我による特殊メイクで顔をまったく変えている。
特に風我は顔の作りを特殊マスクで痩せこけた頬、カラコンで瞳は黒になり、髪はカツラで黒髪の短髪で、目には楕円メガネをかけた格好だ。
「ですが、よくただの飲み友達を通しますね。」
「なんでも、アタシの見た目と性格のギャップに驚いたんだって。」
「……どういう、事だ?」
「んー、なんでも見た目が上司を若くしたような感じらしいのよ。これで白衣を着てたら完璧にその嫌味で憎たらしい上司の若いバージョンになるんだって。二人ともそう言ってたわ。」
その言葉に首を傾げ、想像してみる。
確かにこれで白衣を着ると怪しい医者や研究員といったイメージになるだろうか。
「白衣?その方は医者なのですか?」
「みたいね、本人が医者だって言うから、調べたら結構名のある医者みたいよ。もう一人は下っ端兵士で、仕事が嫌になったから今は門の兵士にしてもらったんだって。」
「そうですか。」
「そうそう、二人の前ではアタシの名前は『神崎・礼斗』だからね。」
そう二人に注意した時、コツコツと聞こえてきた足音が聞こえた。
音も無く素早く隠れる三人。
現れたのは白衣を着た男と兵士。
「あ、田島さん。桜木さん。」
風我が箱の裏から出る。
どうやら待ち人のようで、翔護とレインもそれに合わせるように出る。
「よぅ、神崎。相変わらず瀬戸内博士そっくりだな。」
(瀬戸内博士?)
聞きなれない人の名前に首を傾げたレインだったが、先程風我が言っていた『嫌味な上司』だろう。
「いやだな、桜木さん。俺の知らない名前出されても困るって前にも言いましたよ。」
「そうだよ、桜木さん。瀬戸内博士なんかより神崎さんの方が思いやりのある男だ。」
桜木と呼ばれた茶髪の男性は笑って謝ると翔護とレインの方を向いた。
「こいつらが神崎と一緒に特区に入る奴らか?」
「初めまして。」
「……よろしく、頼む。」
「うん、俺は田島・清人。こっちは桜木・宗平って言うんだ。こちらこそよろしく。」
軽く挨拶をすると歩き出す五人。
歩く途中でも風我と二人の会話は進んでいく。
最近上司が更に変だ、軍を辞めようかと考えている、奥さんに子供が生まれたなど、内容は移っていく。
「でも、良かったよ。俺、今の仕事辞めようかと思っていたんだ。だから最後に神崎さん達の手助けが出来てよかった。」
ポツリと呟いた清人の言葉に顔を向ける。
「仕事を辞める?田島さん、今の職場やめるんですか?」
「うん、神崎さん。桜木さんと神崎さんには前にも言ったけど、俺……人を救いたくて医者になったのにさ、誰も救えてないんだ。」
俯いて言う清人の言葉に宗平も苦い顔をする。
自分も過去にそう感じたから何も言えない。
「俺も軍辞めたいって思ってるし、別に止めやしねぇけどさ。そんな簡単に辞めれるのか?」
「先輩がさ、あんまり表情出さない人なんだけど凄く優しい人でさ。だから俺の事考えてくれて、他の場所に移してくれるって言ってくれたんだ。明日には此処を離れる事になっているんだよ。本当は二人には言おうと思ったんだけどさ、特区で働いている人間は機密保持が課せられてるから言えなかったんだ。」
申し訳なさそうに俯く清人。
そんな背中を思いっきり叩くと笑った。
「そっか、寂しくなるな。でもまた三人で遊びに行こうぜ。」
「また一緒に飲みましょうね。田島さん。」
桜木と神崎の言葉に涙ぐみながら頷く清人。
レインが清人に近づいて声をかけた。
「……医者は、生と死を扱うものだと思う。だから医者という職業は辞めるな。」
その言葉に困ったような顔をする。
「そうだね、医者はそういうものだ。だから俺は今の職場が……ううん、なんでもない。それに俺、いつか個人の病院を作ろうと思うんだ。小さくても病院を作ってゴーストとかに襲われて怪我をした人を助けたいんだ。だから医者を辞めるつもりは無いよ。」
その言葉に神崎も桜木も安堵する。
キラキラと輝いた瞳で夢を語るその姿にその場の空気が明るくなる。
「そりゃいいな。俺も是非怪我をしたらお願いするぜ。……おっと、着いたぜ。」
そう言われて前を見る。
そこには文字通り、巨大な『壁』があった。
それは無機質で、どこか禍々しく、民家の先に突如現れた。
先はどこまでも長く、世界と区切られたような、異様な光景だ。
「お二人とも、ご協力感謝します。」
頭を下げられ、お礼を丁寧に言われた二人は照れくさそうに笑う。
「あなた方もお友達を連れ出せると良いですね。」
「頑張れよ。」
励ましの言葉をかけられ、脚を進める。
二人に見送られ、三人はクリスが待っている木漏れ日の館を目指した。



三人は知らない。
あの優しい二人が言っていた男の事を。
二人が行った事を。
救えないというのは誰の事か。

……そして、それをしてしまった自分を悔やんでいる事を。
三人が二人のした事を知るのはもう少し後の話。

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  1. 2007/10/05(金) 23:10:53|
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