IF Another despair side:Syugeibu

あってはならない未来。 けれど、ありえなくはない未来。

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El.10

【IF Another despair side:syugeibu】語るは近き、行くには遠き







人生には、思いがけぬ事が起こるものだ。
その思いがけぬ出来事を先人が乗り越えたからこそ、今の我々があると考えねばならない。
しかし、幾百の悲劇と喜劇を超えようが人は同じ事を繰り返す。
如何に先人が同じ事を繰り返してはならぬと呼びかけようと、時が過ぎれば人の記憶は彼方へと飛び去り、出来事は人波の中へと消え去り、全てを忘れゆく。
そして繰り返す、同じ事を、何度でも。
皮肉な事に、同じ過ちを繰り返すのが人であり、しからばそれを正すのもまた、人なのである。





【20XX年 封鎖特区 横浜】
始まりにして終わりの地、鎌倉。
世界結界はもはや意味をなさず、
敵性来訪者の来襲、そしてシルバーレインによるゴーストの発生により荒廃した地。
そのすぐ隣に存在する特区。
終末のお隣さん、とも揶揄されるもう一つの封鎖特区。
【封鎖特区・横浜】
この物語は、世界の終りの一歩手前で紡がれる。



と、言いたい所ではあるが、この物語を紡ぐのは特区横浜と呼ばれる場所でなく、そこから遥か遠い異国の地。
その地で物語の欠片が紡がれる事となる。





結界が崩れてからの来訪者達の動きは実に素早かった。
突然の混乱する世界をあれよあれよという間に蹂躙した来訪者達は、今も人々と戦い続けている。
そして此処はとある国の小さな村。
普段は小さな命の白煙が所々で上がるその村は、蹂躙者達の上げる黒い煙で包まれていた。
逃げ遅れた親が子の手をしかと握り、村の出口へとひた走る。
後ろからするすると滑る様に追いかけてくる奇妙な姿の来訪者達。
その音も出さず這いずる様は人に恐怖を与えるには十分の恐ろしさを持っていた。
荒い息をつき走る母は遂に力尽き、足をもつれさせ倒れ伏す。
倒れ伏す女に涙を流し縋り付く子、母からはとめどなく血が流れ、地面が赤く染まる。
標的が動けないとわかるや否や透かさず周りを取り囲み、動かぬ親子を狙い飛び掛る。
「坊主、それはお前の母か?」
二人しか居ぬと思っていた子は突如現れた長身の男を見上げる。
そこには、先程にはちらとも見えなかった銀の長髪を靡かせる男が居た。
周りの囲んでいた来訪者達は残らず切り捨てられ、その周りに居た来訪者達も衝撃波を喰らったのか周りに倒れ伏している。
「ぁ・・・・・・。」
あまりの事に子は一瞬気が動転してい、まともに返答が出来なかった。
「口が利けないのか?」
男の言葉に首を振る。
「ならば、答えろ。それはお前の母か。」
再度の問いかけに答えず、また大粒の涙を流す。
その涙が答えであった。
「そうか・・・・・・少し待て、まずこいつらを滅ぼす。話はそれからだ」
仲間を切り捨てられた事に怒り、よろけながらも男に襲い掛かる来訪者達。
その一撃一撃を見切り最小の動きでかわしてゆく。
「お前達からは怒りを感じる。仲間が滅ぼされて怒り、悲しんでいるのだろう?」
来訪者の腕を刃物に変え頭を狙う突き攻撃を僅かに右に体を逸らし相手の頭部を薙ぎ払い、そのまま体を捻り後ろから襲い来る来訪者を串刺しにする。
「それは私達も同じだ。家族や同胞を殺され、家を焼かれた者の心はお前達と同じなのだ。」
襲い来る来訪者の攻撃を串刺しにした者を放り投げて防ぎ、ひるんだ隙をついて吹き飛ばす。
「だからこそ、残念に思う。とても、な。」
無表情で会話を締め括ると、残った来訪者達に龍撃砲で止めを刺した。





神之戯雷覇が、村を襲う来訪者を処理したのは一年以上も昔の話である。
久方ぶりに村を訪れるとあの被害が嘘であったかのように活気を取り戻していた。
その逞しさには感服し、尊敬の念すら感じたものであった。
夜の帳がおりた荒野に冷え冷えとした風が吹き荒れ、野営していた者達を包む。
隙間風に揺れる火の光に照らされた報告書に記載されている来訪者被害の報告書を捲ってゆく。
あの時、来訪者達に村を襲われたという生存者の連絡を受け、現場へと到着した時には既に少年の母は手の施しようがない状況になっていた。
情報伝達が十分な現代において本来ならば事前に助けに来る事も出来た。
だが、あまりにもこの世界に来る来訪者の数が多過ぎる上、各地のゴースト事件の多発がそれに重なり、対処しきれないというのが現状である。
「せめてもう少し来訪者が訪れるのが減れば現状が良くなるのですが。」
報告してきた側近の男の洩らした言葉を思い出し溜息をつく。
「親方様、お疲れですか?」
横から聞こえてきた声に無意識に眉間に寄せていた皺を緩めた。
隣に立つ人間。その人物の名は満鶴(みつる)。
先程、雷覇の回想に出てきた子供の名である。
あの事件の後、能力者の素質があった満鶴は身寄りがなかった事もあり、雷覇に引き取られる事となった。
能力を無意識に抑えていたために起こっていた発育不良も能力の開花と共に直り、今では本来の歳である十五に相応しい身長と体格となっている。
現在は当主の警護に当たりつつ、直に修行をつけてもらう毎日を送る日々だ。
「なんだ、私はそれほど疲れているように見えたか?」
「見えますね。」
ぴしゃりと言われ鳩が豆鉄砲を食ったような表情になる。
満鶴という弟子は静かで殆ど自分の言葉を口にしない。
どうやら雷覇自身が思っていたよりも遥かに疲労を負っているように見えるようだ。
「この地に着いてから既に二十日が過ぎ、その間親方様は夜を日に継いで働いております。今までは何も申しませんでしたが、その報告書でこの地でのやるべき事は終了したはずです。これ以上のご無理は体に障りますので体をお休め下さい。」
「これでも休みは十二分に執っているつもりだが……そうか、お前の目から見ればまだまだか。」
「はい、以前に比べれば幾分かはまともになりましたがまだ十分な休息を取っているとは言えません。」
取り付く島もない言葉に雷覇はもう一度溜息を吐く。
満鶴は能力者としては覚醒してから日が浅く、側近になったのもつい先日であるが事務処理と戦闘、両面において有能な部下であるが如何せん心配性な所があった。
そのお節介とも呼べる心遣いを受ける度に、雷覇は祖国に居る女言葉を使う情報通の弟と、あの寮の責任者たる少女を思い出してしまう。
「親方様、どうかいたしましたか?」
表情を僅かに曇らせてしまった雷覇の様子を見た満鶴が声をかけてきた。
「いや、少しばかり、昔を思い出してしまってな。」
「それは、親方様が卒業まで居たと言っていた木漏れ日の館とかいう寮の事ですか?」
「……あぁ。その寮の事だ。」
息を吐くように言った、雷覇の微妙な空気の変化を肌で感じ、満鶴は後悔した。
先日、雷覇の兄弟である神之戯風我から連絡があり、
「館ノ寮生全滅シ、ヒカル政府ニ捕縛サレル。事ココニ至リ三条発令考慮シテ戴キタク――。」
満鶴はそこまでしか見ることは出来なかったのである。
しかし、全滅と捕縛と書かれた内容は、如何に柔軟に考えても穏やかではなく、三条が何かをわかる術は満鶴には無いが、ヒカルというのはおそらく名前で、館は木漏れ日の館だという結論に至った。
だからなるべくその話題に触れないように気をつけてはいたが、手紙の内容を忘れる事も無かった事にする事も出来なく、せめて話に挙げぬように気をつける……満鶴に出来るのはそれだけであった。
しばらく居心地の悪い空気が天幕の中を漂う。
長い髪に隠され雷覇の表情を窺う事の出来ない満鶴は自己嫌悪に苛まれる。
(不味い事を言ってしまった。親方様に謝らなければ)
意を決し言葉を出そうと口を開けたが、雷覇が机に書類を置いた事で再び閉じてしまった。
「手紙は何処まで見た?」
僅かに眉を寄せ、満鶴を見る雷覇に凍りつく。
だが、雷覇の目に怒りの感情は無く、それに安堵の息を漏らす。
「だ、第三条の辺りまで見えました。」
「そうか。」
そう言いしばらく口を閉ざしていた雷覇であったが、満鶴に席に座るように促し、満鶴が座るのを確認すると、揺らめく火を見つめながら独り言のように語り始めた。
「あの寮は……とても居心地の良い空間だった。寮長は……ヒカルは私よりも随分幼い少女だったが、誰よりも早く起き庭を散策してから朝餉の仕度を始めるのが日課だった。起きる時間帯が大体私と同じだったので、共に庭を散策する事もあったな。」
「手紙に書いてあったヒカルという名前は、その寮長殿の事だったのですか?」
満鶴の言葉に雷覇は静かに頷いた。
「そうだ、翔護や風我も随分気に入っていたな。彼女の人望はかなり厚かったな。ヒカルの周りには常に人が居た。穏やかでいつも微笑み、誰にでも分け隔て接し、少し涙もろく、誰にでも好かれるとても優しい女性だ。」
「親方様も好きだったのですか?」
「……そうだな。とても好ましい女性だった。」
そう言った雷覇の表情は普段見れない優しい表情をしており、ほんの僅かではあるが微笑を浮かべている。
その表情に思わず笑みを浮かべ、その女性について言おうと思った満鶴であったが、急に険しい表情をした雷覇に言い出す事が出来なかった。
「事件のあらましはこうだ。木漏れ日の館と呼ばれる寮の実態は政府転覆を図る武装組織で、政府にテロを仕掛けようとしていた。その為強制捜査を行おうとしたが、攻撃を仕掛けられ仕方が無く武力鎮圧を行った……だそうだ。」
「……。」
「だが、攻撃があったにしては負傷者が殆ど無く、負傷した兵士もかすり傷程度、寮生は全員死亡……新聞の死亡者にはヒカルの名前もある、風我の情報では生存している。おそらく表向きには死亡した事にされたのだろう。」
ヒカルという少女の事を話していた時の穏やかな表情は消え去り、情報の内容を思い出したのか、冷笑を浮かべた雷覇に背筋が寒くなるのを感じ、鳥肌の立つ腕を擦った。
「どちらにせよ、木漏れ日の館がテロ組織と言う事自体ありえない。」
「つまり……。」
「政府の何者かによる陰謀……と見るのが良いだろうな。」
「な、ならばそれを市民に訴えれば良いのではないですか。何故親方様は何も行動を起こさないのです。」
眉を顰めて訴える満鶴に視線を一瞬向けるが、すぐに戻す。
「親方様が訴えかければ世界も無視できないはずです。」
無表情に戻った雷覇に更に言葉を続ける。
神之戯家は世界各地に支部を持ち、ゴーストや来訪者と戦う援助を行い、資金源も豊富な世界有数の組織となりつつある。
「確かに、満鶴の言う通りだろうな。だが、今は声を上げるべき時ではない。今、日本政府の闇を指摘すれば、ただでさえ崩れかけている政府は世界に叩かれ一気に崩れる。闇だけではなく全てが崩壊すれば、日本と言う国が消滅しかねない。」
「で、ですが……。」
「今回の寮への攻撃は許されるものではない、許す気もない。しかるべき時が来ればそれを行った外道は完膚なきまでに叩き潰す。」
冷酷な光を宿す瞳で呟く雷覇に更に背筋が粟立つのを覚える。
雷覇は満鶴にちらと視線を投げ話を変えた。
「現在、日本政府が行っている能力者隔離政策についても穴が多く悪い点を上げればきりが無いが、全てが間違っていると言うわけではない。実際野放しに出来ない能力者も居る上、世界結界の中心地点であり、一番被害が多大であった日本であの処置に踏み込んだのは日本という不安定な国が取れる苦肉の策だったのだろう。もう少し、違う策もあっただろうし首輪をつける行為がどういう結果に繋がるか解らない訳ではないだろうが……いや、もしかしたら本当にわかっていないのかもしれないな。」
日本政府の対応について考え出す雷覇を呆然とした表情で見つめる。
自分を気遣ったと気づいた満鶴は、このままでは完全に脱線してしまうと鳥肌を擦っていた手を握り締め、口を開く。
「親方様、では……ヒカル殿はどうするのですか?」
おそるおそると言葉を発した満鶴に何処か口惜しげに眉を寄せる雷覇。
「もし、立場が無ければ私も救出に向かいたい所だがな、私は個人である前に組織だ。ヒカルについては風我達に任せるしかない。……今は、私が見つけねばならない事に専念する。」
「見つけなければならない事?」
呟かれた言葉に首を捻る満鶴であったがその疑問に答えることは無く、雷覇はこういった。
「その内、お前にも見せる時が来る。大体の目星は付いているからな、答えを教えるのはそう遠い未来ではない。」
揺らめく火の光に照らし出された雷覇の表情は、どこか複雑そうな表情であった。

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  1. 2007/10/19(金) 21:26:39|
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