IF Another despair side:Syugeibu

あってはならない未来。 けれど、ありえなくはない未来。

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El.12

【IF Another despair side:syugeibu】未知数な人間の現場検証


【20XX年 封鎖特区 横浜】
始まりにして終わりの地、鎌倉。
世界結界はもはや意味をなさず、
敵性来訪者の来襲、そしてシルバーレインによるゴーストの発生により荒廃した地。
そのすぐ隣に存在する特区。
終末のお隣さん、とも揶揄されるもう一つの封鎖特区。
【封鎖特区・横浜】
この物語は、世界の終りの一歩手前で紡がれる。










閑静な館から僅かに離れた茂みに彼らは隠れて、館の内部と周辺を探っていた。
数匹の蜘蛛が着物を這い上がってくる。
その蜘蛛に手を差し出し移すと蜘蛛が乗り移り、そのまま耳に近づけ内容を聞く。
蟲の報告を聞く風我の邪魔をしないように周りの気配を窺う三人は、固唾を呑んで言葉を待っている。
「ん、大丈夫みたいよ。」
風我の言葉を合図に三人は素早く館に走り出した。


【木漏れ日の館】


クリスを発見するのは難しくは無かった。
三人が姿を現すと勢い良くレインに抱きつき泣きじゃくりだしたからだ。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん! ヒカルちゃんが……ヒカルちゃんが!!」
そう言いながら錯乱した様子で泣き喚くクリスの背中をレインが優しく撫でる。
目の下には隈が色濃く見え、顔色の悪さからもかなり衰弱している事が見て取れるクリスを安心させようと風我が口を開く。
「アタシ達が来たからにはもう大丈夫よ。今は安心して休んだ方が良いわ。」
あやす様にクリスの頭を撫でると鼻を啜りながら崩れ落ちるように意識を失った。
それを咄嗟に支えるレイン。
「アタシは下の様子を見たいからレインちゃんと翔護ちゃんは上のクリスちゃんの部屋に寝かせてきてあげてくれる?」
二人は静かに頷くとレインがクリスを抱きかかえ翔護の後ろを歩き出す。
その様子を見送ると風我も歩き出した。
惨劇の爪痕をこの目で見るために。




+ + + + + + 




意識を失いぐったりとしているクリスをベッドに寝かせるといったん部屋を出る。

殆どそのままになっている三階のクリスの部屋に辿り着くまでに翔護が驚いたのは、血の匂いが一階で鼻についたにもかかわらず二階よりも上を殆ど荒らした形跡が無い事だった。
その事はレインも不自然に感じたのか遠目でクリスを気遣いつつ辺りを見回している。
「おかしいな。」
そう呟かずにはいられなかったのだろう。
怪訝そうにしているレインに翔護が頷く。
本来こういった範囲の広い場所を捜索する時はもっと荒らされていてもおかしくは無い。
むしろ殆ど手がつけられていないこの状況の方が不自然な事だ。
だが、まったく何もしていないというわけでもないようだった。
この寮は各個人部屋の外はスリッパか専用シューズをはかなければならないのに対し、明らかに土足で入ったと見られる靴跡が残っている。
だが、部屋の内部には踏み込んだ様子が無い。
それが二人には気になっていた。
「……レインさんはクリスを見ていてください。私は少し調べてきます。」
そう言うとレインの返事も待たずに西館に繋がる通路を歩いていった。
「……相変わらず忙しない男だな。」
既に見えなくなった翔護に呆気に取られつつも、クリスの部屋に戻る。
気にはなったが、レインにとって今一番自分がしなければならない事は何かという事を見誤る事はなかった。




+ + + + + +




玄関口で蟲からの報告を聞いていた風我は翔護が戻ってきた事に気がつくと寄りかかっていた扉から離れて翔護に近づく。
「クリスちゃんの様子はどう?」
その言葉に翔護は首を振る。
「まだなんとも言えませんね。どうやら私達が来るまでまったく寝ていなかったようですし、しばらくは目覚めないでしょう。レインさんが傍に居ると言っていましたので、彼に任せて私は降りて来ました。」
正確には無理やり任せて他を調べていただけだが風我はしら無いので、
「それなら安心ね。」
そう言って微笑んだ。
そしてどこか疲れたような表情をする翔護の背中を軽く叩く。
「大丈夫?」
「えぇ、大丈夫ですよ。」
そう微笑んで言う翔護だが、やはり何処か瞳が濁っている。
クリスの気を失うまでの様子に不安を感じているようだ。
(翔護ちゃんも休ませた方が良いかしら。どうせ今のアタシ達はまともに動けないんだし)
そんな事を考えながら蟲を再び送り出す。
「そう、なら良いけど。まぁ、とりあえずクリスちゃんについてはレインちゃんに任せましょうか。」
風我の言葉に頷く。
「そうですね。レインさんも今は二人で居たいでしょうから。クリスさんが起きてから話を聞きましょう。」
そう言うと辺りはしばらく静寂に包まれる。
「……それにしても、随分酷い有様ですね。」
「翔護ちゃんもそう思う?」
「まぁ、どういう風に見てもやりすぎだと言うしかありませんね。しかも、無抵抗の相手を虐殺したようですし。」
「……どうしてそう思ったの?」
「能力を使った後がまったく無い事。そして、損傷場所です。相手は裏口と玄関口から二手に分かれて進入した。」
そう言いながら翔護は靴跡に指を刺しつつ歩き出す。
「おそらく向こうはこの日創立記念の日だと知っていたのでしょうね。でなければ、玄関からの進入などという大それた真似は出来ません。何よりも此処に戻ってくる前に他の館も見て来ましたが、東館と西館には進入の痕跡が見られなかった。この本館に寮の全員が集まるのはイベントの時だけです。」
歩きながら説明する翔護の後ろを無言で歩く風我。
「そして、ヒカル様はあの男達に招待状を送ったらしいじゃないですか。」
「まぁ、届いたらしいわね。全員でやるパーティだって書いてあったらしいわ。」
質問に答えると、翔護は眉を顰め僅かに唇を噛んだ。
招待状を送る事が出来ない状態だった翔護にとって、もしも居場所をしっかりと教えていればという後悔の気持ちがあるのだろう。
「それを確認したのならば、なおさらこの日を選んだのは偶然と見るべきではないでしょうね。」
そう言い嘲る様に笑うと、
「私のような者がそういう手を使うならばともかく、仮にも国家機関である政府がやっていい事とは思えませんけどね。」
皮肉を吐き捨てるように言った。
「とにかく、進入した彼らはこの階段から更に二手に別れ」
階段上に指を滑らせる。
「各階を捜索、下の兵士達はそのまま談話室と食堂に向かう。」
再び歩き出し食堂に辿り着く。
「上に居ない事を確認すると合図と共に一斉突入。」
勢い良く食堂の扉を開き早足でキッチンへと向かう。
「この台所の入り口で中にいた人間を一掃したのでしょう。血痕は殆どキッチンにありました。」
翔護の言葉にグルリと辺りを見回す。
食堂全体に血が飛び散っていたり床に赤い水溜りの跡はあるが、キッチンはまさに血みどろと言う言葉が相応しい状態だ。
確かにこの入り口の位置ならばキッチンの奥まで全て見通せた。
「此処にある破損の傷跡は全て同じ種類の弾丸です。抵抗するのならばキッチンはもっと色々な跡があって良いはず。能力者の武器は剣や槍など様々ですから……その事は談話室などでも言えますがね。それに、射撃場所にしたと思えるこの場所には傷一つついていない。」
自分が立つ場所を指差す。
確かに傷がまったく無い。
「以上の点が、無抵抗の人間を殺したと言う証拠ですね。専門家ならもう少し別の場所にも色々と疑問視できる事があったでしょうが、残念ながら私は専門家ではありませんので。」
苦笑いを浮かべながらキッチンの奥に進む。
「おみごと、アタシとばっちり考えが合ってるじゃない。ちょっとビックリしたわよ。」
「失敬な、このくらいの分析が出来るのは普段の私は当たり前です。」
(それはわかってるけどね……今のアンタは普段のアンタとは色々違うじゃない)
……正直に言うと、風我は翔護がこれほど冷静に分析するとは思ってはいなかった。
普段の翔護ならばこの位は朝飯前だろうが、ヒカルに関する翔護はあらゆる意味で未知数だ。
冷静な翔護のあの変貌振りにはかなり度肝を抜かれた事を今でも風我は鮮明に思い出す事が出来た。
その上、今の翔護の精神的疲労が僅かに見える。
何処まで正確な判断が出来るかなんて事は風我にはわからない。
そんな事を考えながらキッチンの中を歩いていた風我の視界の隅をケーキのようなものが横切る。
腐ってしまったと思われるパーティー用の食事の中で、この溶けかけたケーキだけは何故か捨てることが出来なかったのでそのままにしてある。
事件発生から既に四ヶ月近くは経過するそのケーキは、本来ならば他の料理と同じように変色しているはずだが、何故かカビも生えずに生クリームが溶けかけるだけだった。……まるで本来食べる人間を待っているかのように。
キッチンの隅にある隠し部屋の入り口から中に入る。
四畳前後のその部屋の床には血溜まりが二つあった。
奥の血溜まりの前に翔護は膝を着くと、既に固まってしまっている血を撫でる。
「どうしたの?」
不思議な行動に首を傾げつつ近づく。
「おそらく、これがヒカル様の血痕です。」
優しく撫で付けていた翔護から発せられた物騒な言葉にギョッとする風我。
そんな風我の様子を気にも留めず無表情で撫で続ける翔護の指には手の油で溶けた血が付いていた。
「……どうしてそう思うの?」
翔護の隣に並び風我は顔を近づけて既に凝り固まっている血を凝視する。
よく見ると固まった血からウェーブがかった銀髪が見えた。
「確かにこの血溜まりには血がこびりついた銀髪が一緒に固まっているし、少しウェーブがかっていたけど、もしかしたら他の寮生かもしれないじゃない。」
「そうですね。そうかもしれません。むしろ、その方が確率的には高いですよね。」
風我の言葉に翔護は険しい顔で頷くとゆっくりと立ち上がり、隠し部屋を出ていこうと扉に手をかけるがその状態で止まってしまう。
その後姿を怪訝そうに見ていると翔護は振り返り風我を見る。
「ですが……やはりこの血はヒカル様の物ですよ。」
そう言って微笑むと指に付いた血を舐め部屋から出て行った。
しばらく綴じた扉をなんとも言えない顔で見つめていた風我だったが、溜息を吐いて部屋から出る。


(やっぱり色々な意味で未知数だわ……つーか、あれじゃただの危険人物っぽいわよね)
そんな事を考えながら。


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  1. 2007/10/30(火) 01:10:55|
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