IF Another despair side:Syugeibu

あってはならない未来。 けれど、ありえなくはない未来。

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Le.21

【IF Another despair side:syugeibu】常に大きく自由であれ




【20XX年 封鎖特区 横浜】
始まりにして終わりの地、鎌倉。
世界結界はもはや意味をなさず、
敵性来訪者の来襲、そしてシルバーレインによるゴーストの発生により荒廃した地。
そのすぐ隣に存在する特区。
終末のお隣さん、とも揶揄されるもう一つの封鎖特区。
【封鎖特区・横浜】
この物語は、世界の終りの一歩手前で紡がれる。





青い空に溶けるように広がる海を一隻の船が進む。
潮風を目一杯体で感じながら楽しげに歌う一人の男。
船首にまたがり明るく歌を歌っている男――神崎智也を見つけた船長は呆れた様子で智也に近づいた。

「おい兄ちゃん、そんな所にいると海にまっさかさまだぜ?」

船長の言葉にクルリと振り返る。
その顔は白い八重歯がくっきりと見えるほど晴々と笑っていた。

「何言ってるんだよおっちゃん! こんなに天気の良い日は一番見晴らしの良いところで歌うのが常識なんだぜ?」
「昨日は『曇りだからこそ歌って晴れにしなきゃな!』とか言ってなかったかい?」
「そうだっけ? 良いじゃん良いじゃん、楽しいんだからさ!」

そう言って再び海に向かって陽気に歌う青年に思わず笑ってしまう。
この智也とか言う男はこの日本行きの貨物船に乗らせてくれと言ってきたので仕方なく乗せたのだが、船の仕事は手伝うし料理もなかなか上手く、実に気の良い男で船に乗せて良かったと船員からも評価が良い。
船長もこんなに明るい青年を見るのは久しぶりだと思っている。
このご時世に此処まで楽しそうに笑う人間はそう多くないだろう。
特に彼は――。

「そう言えば兄ちゃん。なんでまた日本に向かっているんだい?」

そう、彼は能力者だというのに能力者を抑圧している日本にわざわざ入る理由が船長にはどうしても気になっていた。

「別に特に理由はないぜ。」

あっけらかんと言った智也に口をあんぐりと開けてしまう。

「……ないのか?」
「ない。」

きっぱりさっぱりあっさりと断言され、思わず溜息がこぼれる。
そんな船長の様子に気がつかず智也は青い絨毯の向こうをまっすぐ見ている。
キラキラと輝く海の向こうに灰色の味気ないコンクリートが見えてきた。

「おぉ、ついたっぽいな。」
「そうだな、もうそろそろ荷物纏めといた方が良いぜ。もうすぐ港だ。」

船首からピョンと飛び移ると体を伸ばす。

「おっちゃんは仕事に戻るんだよな。」
「まぁな。これから業者に食料渡す作業だ。お前さんは港に降りたら好きな時に降りな。挨拶は良いぜ。」
船長の言葉にこくんと頷く。

「乗せてくれてありがとな、おっちゃん。」

改めて御礼を言う智也にニヤリと笑う船長。

「なに、ねずみを乗せたようなもんさ。」

その言葉に更に嬉しそうに笑う智也。

「そっか。じゃ、俺は荷物纏めて来る!」

「また後でな!」と手を振り走りだす。
その様子を見てやれやれと首を振ると踵を返し、仕事に戻ろうとした。

「そうそうおっちゃん、さっきの話だけどさ。理由があったぜ。」

背後から呼びかけられ振り返る。
其処には今までの明るい笑顔と同じだがどこか違う空気を纏う智也の姿があった。
その違和感のある姿に目を見開く。
船長の様子を気がつかず言葉を続けた。

「あの場所に行く理由は――



楽しい事が待ってる気がしたからさ。」






「特区に入るにはどうすりゃいいかな。」

港の木箱の上に胡坐を掻き、肘をついて智也は考えていた。

「強行突破は面倒臭いし、政府に頼ると会える人間少なくなっちまうし、密入するのはもっと面倒臭いし……やっぱ強行突破かなぁ。」

バリバリ頭をかきつつ「めんどくせー。」と呟く。

「しかしすっかり忘れてたぜ、そういや今封鎖してたんだよな。なんで封鎖なんかしちまったんだよ。入りにくいじゃねぇかまったく。」

しばらく八つ当たり気味にブツブツ呟いていたが、一つ大きな欠伸をすると箱から飛び降りる。

「とりあえず、突入準備だよな。……その前に腹ごしらえ。」

腹の虫の声に手を当てて摩る。
自分が思っていたよりも腹が空いていたらしい。

「腹が減っては戦が出来ぬってやつだな。」

ニシシと照れたように笑い、食べ物を探しにバイクを走らせた。





「おばちゃん、梅と鮭と昆布とカツオとイクラ頂戴。」

町に辿り着いて一番最初に目に付いたおにぎり屋でおにぎりを調達すると、その辺の壁に寄りかかって包みを開け始める。
握りたての暖かいご飯に優しく包まれている具材を頬張ると、梅の酸っぱ甘い果肉の味が口いっぱいに広がる。

「うん、美味い。」

モグモグおにぎりを頬張りつつ今後の予定を考える。

「特区に入ったらまず近い場所に居るACにいる天野の旦那に会うか? 冬美嬢にも会いたいけど、社長さんになっちまってるし。」

片手で地図を持ちつつ、予定を立てていく。

「あ、でも帯刀の旦那とかヒカル嬢に先に会ったほうが良いか? ……今、特区の中はどうなってるんだろうなぁ。中の様子が分からない事と動き辛いな。」

首を何回かゆらゆらとゆっくり傾けて考える。
あーでもないこーでもないと考えた結論は――

「まぁ、会いたい奴は結構居るんだししばらくフリーで特区内を歩き回るか。ブラブラ歩いてたらそのうち誰かに会うだろ。」

というとてもわかりやすい答えとなった。
結論が出てスッキリすると食べかけのおにぎりを口に詰め込み、残ったおにぎりはバックに詰め込むとバイクで走り出す。

「よっし! いざ行かん、楽しい事の下へ!!」




こうして智也は久しぶりに会う人々と、これから起こる予感がする楽しい事を求め、あの場所へと帰ってきたのだった。







『○月×日未明、バイクに乗り、目と口に穴が開いた強盗ルックに身を包んだ男(監視カメラから推測)が壁を強行突破した。通り抜けた壁は砕け散っているため急ぎ修理するように。その間、何も起きないように警備兵を配置すること。』


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  1. 2007/11/02(金) 22:00:39|
  2. 番外編
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