IF Another despair side:Syugeibu

あってはならない未来。 けれど、ありえなくはない未来。

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Le.1

【IF Another despair】暗き世界の裏側の闇



これは語られる事の無いはずの物語
これは語り継ぐべき者の居ない伝承
これは本来存在すらあり得ない奇譚

語られるべき物語があるとしたならばという仮定の上にあってさえ
それは外伝であり害典であるであろう知られざる逸話

それでも知る勇気があるのかな?


――ならば聞け、"我が弟の友(ノウリョクシャ)"よ――




それは防衛省により掲げられた『能力者管理計画』という言葉が世に広まりつつあった頃の事である。


先頃、【危険人物】(ノウリョクシャ)隔離処理として近隣都県からの進入を制限された神奈川県下にあり、その中でも特に厳重に封鎖された都市の一つ、『封鎖特区:横浜』。その南東部へ繋がる幹線道路の"災害防止柵壁"(バリケード)の前に、数百名の武装集団の姿があった。

軍隊と呼ぶには装備や態度に統率の無い集団だが、それでも各々が手にするものは武器と呼ぶのが相応しいように思われることから、やはり何らかの戦闘集団なのだろう。
「それではこれから計画における同時包囲平定作戦を開始します」
無骨な格好の集団の中、いかにも仕立ての良さそうなスーツに白衣を羽織った背の高い男の声が響いた。彼がこの戦闘集団を率いるリーダーのようだが、どうにも浮いたその服装は彼が現場へは出ないのであろうことをうかがわせた。

そして、その声に呼応するかのように開かれた封鎖は数百名の足音を飲み込み、ものものしい音を立ててその口を閉じた。
遠ざかる行軍の音は雄々しく、2度とその背後の顎(あぎと)をくぐる事が叶わない事など知りもしないのであろうと思われた。



「まったく…どこから集めてきたのか知らないけれど、可哀想になるね。」

旧横浜市との境界を表す強大な"災害防止柵壁"からさほど離れていないとあるビルの中で、その男は一人でモニタマトリクス上に視線を滑らせていた。

封鎖特区の隣接都市には政府の関連施設が軒並み立ち並んでいる。
中でも特に政府が力を入れる施設の一つ、横須賀市内にある『管理計画研究所』だ。
防衛省および政府から秘密裏に要請を受けた複数の企業が合同で展開しているこの計画の内でも最もセキュリティランクの高い特別企画開発部署、いわゆる"対能力者装備開発室"があった。

もっとも、所内ではもっぱら『実験室』という名で揶揄されているこの部署だが、モニタに魅入っているその男ですらあながち間違っていないと思っているとかいないとか。

「こっちは…催眠ガス?いや…これも"危険能力"(アビリティ)か。対策をしないといけないね」

男がくるくると視線を入れ替えるモニタには、どれも奇妙な光景が映し出されていた。
愛くるしい少女に今にも襲い掛からんとしていた集団が次々とまるで催眠術にでもかかったようにその場でバタバタと昏倒しだしたり、全身が薄青く発光しているように見える男が腕を大きく振るう度に対する集団が距離をおいているにも関わらず次々と見えない刃になぎ倒されていったり、身の丈をも超える大鎌を軽々と振るう幼い少年であったり……

画面を眺める男が先ほど送り出した集団は、あっという間に半数になり、そのまた更に半数になり、半分の半分の半分の数になり、そのまた更に半分になった時、その数は相対する能力者達と同数となっていた。

「前回よりはもった方かな。データを取る為にはもっと粘って欲しかったんだけれどね」
呟いて立ち上がりモニタに背を向けてゆっくりと扉へと向かう男。
――が、不意に振り返り先刻まで座っていた彼の指定席へ戻ってくる。

「いけないね、これを忘れたら何も出来ないじゃないか」

椅子の背から取り上げられてふわりと翻る白い裾。男はバサリと音を立ててその白衣に袖を通すと、『室長 紅月星夜』と記された胸元のタグを一撫でして、静かに部屋を出て行った。



男が先ほどまで見ていたモニタマトリクスには、もはや先刻のような奇妙な光景は見られなかった。
いや、ある意味ではとてつもなく異様な光景とも言えるのだろう。
そこには対能力者装備の実戦検証の為とは知らずに集められた様々な「人間」達の残骸の山しか映されていないのだから――

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テーマ:創作 - ジャンル:日記

  1. 2007/09/04(火) 00:28:44|
  2. 番外編
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